出版社内容情報
「世界のミフネ」の栄光の陰に、三船プロの内紛劇や離婚裁判、不倫騒動、晩年に患った認知症。徹底取材で明かされる巨人の実像とは?
映画化! MIFUNE:THE LAST SAMURAI
「世界のミフネ」の栄光の陰に、三船プロの内紛劇や離婚裁判、不倫騒動、晩年に患った認知症。徹底取材で明かされる巨人の実像とは?
内容説明
『七人の侍』『用心棒』『赤ひげ』―。今なお世界の映画人から尊敬される真の国際的映画スター・三船敏郎。一方で、酒乱による素行の問題や、三船プロの内紛、離婚訴訟や不倫騒動など数々のスキャンダルにまみれた。不仲と噂された黒澤明監督との関係から認知症に苦しめられた最晩年まで、徹底した取材でその実像に迫る。
目次
序章 忘れられた栄光
第1章 世界のミフネ
第2章 三船プロダクション
第3章 離婚裁判
第4章 黒澤明との不仲
第5章 内紛と分裂
第6章 知られざる最期
第7章 追悼三船敏郎
著者等紹介
松田美智子[マツダミチコ]
山口県生まれ。舞台女優として活動し、1975年には俳優の松田優作と結婚。長女をもうけた後、81年に離婚。その後、シナリオライター、ノンフィクション作家、小説家として活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
164
どんな相手にも、別け隔てなく優しい。大の綺麗好きで、掃除とカメラいじりが趣味だった男は、復員後、撮影所の門を叩く。撮影部に欠員が出るまでという条件付きで、俳優部に入った男を、名監督たちは放っておかなかった。独特の面構え、抜群の運動神経と磨いた殺陣の腕を武器に、男は日本を、そして世界を代表する名優へと駆け上がっていく。特攻へ向かう若者たちの、最期の写真を撮って生き延びた軍隊生活。彼らに恥ずかしくない生き方をしたい。ずっとそう想ってきた。世界のミフネ。観ればこちらも大好きになる。撮影部に空きがなくてよかった。2018/10/12
kaoru
65
黒澤映画の主役として圧倒的な輝きを放った三船敏郎。この評伝ではその生い立ちやプロダクション経営、スキャンダルと晩年に重きが置かれている。清潔好き、気配りが細やかで人情味ある反面、激情的で酒乱の傾向も。だがそうした光と影の落差こそ大スターにふさわしい。高度経済成長期の日本を象徴するように様々な事にエネルギーを注いだが「俳優だけに徹していれば」という次男の言葉は鋭い。彼の死の半年後に世を去った黒澤の弔辞に万感の思いが込められている。老いた三船の描写は哀しいが、その存在感は日本を超え世界の映画ファンを魅了した。2020/12/07
つねじろう
58
型破りとか規格外とか野獣とか制御不能とかかの黒澤明を含め日本の監督をビビらせ本気にさせワールドワイドに活躍した三船。世界の名監督や同業者からリスペクトされた役者って彼以外記憶が無い。で作者が歯噛みするほど日本での評価は高くない。その男臭さと同量の幼稚さ未熟さを同居させ観るものを圧倒するエネルギーを爆発させた演技はそれこそ緻密に計算され修練されたものと誰も知らない。それに降参せざるを得ない人々の敗北感と嫉妬が彼の評価に繋がったのか?地道に取材した裏付けのもと役者馬鹿、人間馬鹿三船を描きだした泣ける秀作です。2018/06/12
おさむ
42
77年間の生涯で150本もの作品を残したミフネはまさに最後の映画スターでした。今も昔の黒澤映画を観ると、その存在感に圧倒されます。彼こそホントのラストサムライだったと思います。松田優作の元妻である著者の筆力は相変わらず見事で、多くの関係者の証言から在りし日のスターの光と影を存分に描いています。軍隊で過ごした青春時代、几帳面で気配りの人だった、度重なるスキャンダルも優し過ぎる性格ゆえだった、黒澤明との不仲説の誤り、愛人と別れ痴呆症に苦しんだ晩年など、極めて客観的に書かれており、好感が持てます。2018/05/24
kei-zu
26
リアルタイムの三船は、世代的に「男は黙ってサッポロビール」CMが記憶のギリギリ。その後、黒澤作品や東宝の戦記映画を見て、圧倒的な存在感に驚きました。周囲に細やかに気を遣う性格でありながら(だからこそ?)、会社経営や家族関係に苦しむ姿は読んでいて苦しい。発言者によって語られる内容が変わるのは、映画「羅生門」のようだ。先に評伝を読んだ脚本家・橋本忍による証言も多く引用され、映画史が立体的に浮かび上がりました。良書。2024/05/22