出版社内容情報
浅草の呉服屋の一人娘結城麻子はアンティーク着物の商売を始めた。着物を軸に交差する二組の夫婦。かつてなく猥雑で美しい官能文学。
恋ではない、愛ではなおさらない、何か――
浅草の呉服屋の一人娘結城麻子はアンティーク着物の商売を始めた。着物を軸に交差する二組の夫婦。かつてなく猥雑で美しい官能文学。
内容説明
浅草の呉服屋の一人娘、結城麻子はアンティーク着物の仕入れで、京都の葬儀社の桐谷正隆と出会う。野心家の正隆がしだいに麻子との距離を縮めていく一方、ほの暗い過去を抱える正隆の妻・千桜は、人生ではじめて見つけた「奴隷」に悦びを見出していく…。かつてなく猥雑で美しい官能世界が交差する傑作長篇。
著者等紹介
村山由佳[ムラヤマユカ]
1964年、東京生まれ。大学卒業後、会社勤務、塾講師などを経て、93年「天使の卵~エンジェルス・エッグ」で第6回小説すばる新人賞を受賞。2003年『星々の舟』で第129回直木賞を受賞。主な著作に『翼』『すべての雲は銀の…』、第4回中央公論文芸賞・第22回柴田錬三郎賞・第16回島清恋愛文学賞を受賞した『ダブル・ファンタジー』、「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズなどがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
408
まぎれもない官能小説である。しかも、なかなかに質の高いそれである。なによりも、官能的な場面までのアプローチの長さ、そしてそこにいたるまでの、それぞれの人物の造形の丁寧さがあってはじめて官能が高まるのである。また、アブノーマルであることが、通常の官能性を突き抜けて凌駕する。誠司のマゾヒズムは男性読者には自分がたとえそうした性癖を持っていなくてもわからなくはない。女性読者の反応と共感度は不明だが。本書は女性作者によるものだが、表現の視点は多分に男性的であるように思う。エンディングには不満が残りそれは残念だ。 2018/04/11
遥かなる想い
328
村山由佳が描く二組の 夫婦の官能の世界。 小池真理子の恋三部作を 想起させるような大人の 世界だった…東京の呉服屋と京都の葬儀屋の二組の 夫婦が順に語る告白は ひどく赤裸々で艶かしい。 それにしても、葬儀屋の 妻千桜が放つ倒錯の 世界は刺激的で、胸が ざわつく。 男女の快楽に行き止まりは ないのだろうか…誰もが 持つ秘めやかな欲望を さらけ出している、そんな話だった。2015/05/27
三代目 びあだいまおう
289
既婚者は読んではいけない。男も女も。いや禁止すべき。登場人物達の少し変わった性癖には共感できないのに目眩く快感に読み手が溺れかねない。浮気や不倫といういけない行為への淫靡な欲望が抑えようとすればするほど襲い来る!貞操感という重い蓋が簡単に開けられる。自分もその禁断の快感に溺れたくなる。一度きりの自分の人生、過ちで得られる快感くらい許されると?今すぐその禁断を掴みたい!本気でそう思う自分が恐ろしい。危険!既婚の貴方、絶対読んではいけません‼️・・・どう?かえって読まずにいられないでしょ?そんな本です‼️🙇2020/01/16
おしゃべりメガネ
233
これでもかというくらい「村山」さんワールドが見事に展開されてます。期待?どおりの官能的な世界観はしっかりと描かれており、2組の夫婦が交差する秘めた性への探求は圧倒的でした。内容はなかなかヘヴィな展開で、サド、マゾの話が一部で記述されており、さすが村山さん!と思わず拍手したくなる描写です。ただ単純にエロスだけの記述だけではなく、心理描写や背景など、しっかりと‘文学’してくれているトコロに作者さんの‘余裕’すら感じてしまいます。『ダブル・ファンタジー』は残念ながら途中でリタイヤでしたが、本作は大丈夫でした。2016/09/25
さてさて
194
『麻子と桐谷。自分と千桜。最初からそういう組み合わせであったなら夫婦としてどちらもうまくいっていたのだろうか』。そんな二組の夫婦が相手のパートナーと”官能世界”に溺れていく様を描くこの作品。そこには様々に苦悩しながらも”官能世界”の快楽から戻って来れなくなる四人の姿が描かれていました。『着物』や『葬儀屋』の描写が物語に彩りを与えていくこの作品。京都の街の描写と京言葉の独特な柔らかさが物語に一つの世界観を浮かび上がらせていくこの作品。村山さんの描く女性作家さんらしい”官能世界”の描写に魅了された作品でした。2023/01/18