文春文庫
生きてるかい?

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  • サイズ 文庫判/ページ数 230p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167900588
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

出版社内容情報

病床での一言、軒下の朝顔、懐かしい編集者、寒夜のぬる燗…日々の営みの細部に宿る「人生の輝き」を端正な筆致で綴る珠玉の随筆集。

長野県の総合病院で平日は医師として診察し、休みの日に原稿を書くという生活を続ける芥川賞作家・南木佳士さんのエッセイ集です。信州の美しい四季の移ろいを背景に、往診先の患者さんが思わず漏らした「生きてるかい?」という一言、今は亡きある編集者の思い出、冬の夜のぬる燗、山行で感じた現在という時間の比類のなさ……日々の生活の何気ない場面、さりげない細部を丹念に掬い取り、「人生って悪くない」と心底から感じさせてくれます。読むだけで、生きる勇気がジワリと湧いてくるーーそんな一冊です。

内容説明

新緑の山路で見上げる彩雲、軒下のあさがお、今は亡き編集者の想い出、寒夜のぬる燗、医療現場で出会った忘れられぬ言葉の数々。自然豊かな信州の四季の移ろいを背景に、医師で芥川賞作家の著者が日々の営みの細部に宿る大切なものを鮮明に描く。人生はそれほど悪くない―読後にからだがほのかに温まる珠玉の随筆集。

目次

1 冬から春(生きてるかい?;紙の一里塚 ほか)
2 春から夏(国立の桜;花見百姓 ほか)
3 夏から秋(森の滑車;夏休み留学 ほか)
4 秋から冬(秋の木曜日;秋の風に乗せて ほか)

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
1951年、群馬県に生まれる。現在は長野県佐久市に住み、総合病院に内科医として務めつつ、地道な創作活動を続けている。81年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴き、同地で『破水』の第53回文學界新人賞受賞を知る。89年『ダイヤモンドダスト』で第100回芥川賞受賞。08年、『草すべりその他の短篇』で第36回泉鏡花文学賞を、翌09年には、第59回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

105
医師として働きながら、小説を書き続けている南木佳士のエッセイ集。華やかさのない地味な内容だが、心に沁みる。自分の日々の生活を愛おしむように生きている姿勢に共感する。日々死に直面する生活で、そのことが負担になり、鬱病になってしまった。その時の苦しい経験も包み隠さず書かれている。そこから回復したのは、書くことと、日々の仕事で経験する命の輝きだったのかもしれない。表題作は同僚の医師が、寝たりきりのお年寄りからかけられた言葉をもとにしている。骨と皮だけになった人が、医師に見せる優しさに涙が出そうになった。2018/04/06

ホークス

42
元本は2011年刊。著者は芥川賞作家で勤務医。パニック障害とうつ病に苦しんだ後、患者を看取らない職務に復帰した。本書は60才頃のエッセイ集で一編3〜4P。悔やみがちな自分をようやっと受け入れ、小さな実感に向かいつつある。医師である著者は、人間が「こころ」だけの存在ではあり得ず、「からだ」を通じて悦び苦しむ存在だと言う。 書名は同僚に聞いた、寝たきりの高齢女性の言葉。診察後、無口な彼女が「生きてるかい?」と問う。医師が「生きてますよう」と答えると笑顔に。誰かの認証を求めた恥じらいとユーモアに生命を感じた。2021/11/21

Sakie

19
病んでるときは南木佳士を選んでおけば、間違いない。自分がしばらく元気だったので忘れていた。『状況に慣れて肩の力の抜けたからだは外に向かって開いているから、案外多くの情報をあるがままに受け取っているのだ。そこに妙な力が加わると、五感の入り口が狭まる』。それが今の私だ。気づくと肩や背中を強張らせている。南木さんは自らを開く方法を知っている。『血のめぐりがよくなったからだは外界に向かって開いてゆく。開いたからだには澄んだ大気がもろに入って、よどんだものを追い出してくれる』。床拭きか、稽古か。汗をかきたくなった。2020/11/27

ジュースの素

7
南木氏の本を読むと静かな寒い土地と素朴な人々の表情がいつも見えてきて心が非常に落ち着く。私は実家が長野県寄りの岐阜県の田舎なので余計に情景が解るのかもしれない。細やかな心の移ろいをとても的確な文で表現されていて さすがだなぁと思い入る事が多い。これは新聞に掲載された短文を四季に沿って集めた本で 季節を大切にする彼の感性がよく伝わる。2016/07/07

ken

6
南木佳士の死生観に改めて共感する。ここで綴られる過去の追憶と現在の心境には、人生への諦観のようなものがそこはかとなく滲んでいる。彼のその実感の根っこには、無数の死を直視してきたことと自身のうつ病の経験があるわけだが、それはとにかく自分自身の存在さえも頼りなく手応えのないものにしている。各エッセイは春、夏、秋、冬と季節ごとに並べられていて、その時々の自然の風景とともに描かれる。人間は自然の一部であって、その身体も心も自然と共鳴するのだろうか、少なくとも南木は自然との一体の中で心の平穏を得ているらしい。2019/12/28

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