出版社内容情報
持病と闘いながら鋭く自己を問いつめ、その孤独と絶望を中国古典に、あるいは南洋への夢に託した作家、中島敦の傑作六篇。
大きな活字、詳しい注解、作家評伝付き
持病と闘いながら鋭く自己を問いつめ、その孤独と絶望を中国古典に、あるいは南洋への夢に託した作家、中島敦の傑作六篇。
内容説明
気品ある文体と、研ぎ澄まされた感覚。病魔とたたかいながら自己の内面を探究し、出ずる孤独と絶望とを中国古典に、あるいは南洋の風光に託した中島敦の作品世界は、永遠にその輝きを失わない。芥川賞候補に推され、文学的起点となった「光と風と夢」。名作の誉れ高い「李陵」「弟子」「山月記」など、必読の六篇を収める。
著者等紹介
中島敦[ナカジマアツシ]
明治42(1909)年、東京都生まれ。東京帝国大学国文学科卒業。私立横浜高等女学校で教鞭をとるかたわら創作に励む。昭和16年、南洋庁の国語編修書記としてパラオへ赴任するが、健康を害し翌年帰国。この南洋行きの直前に深田久弥に託した作品が「文學界」に掲載され脚光を浴びる。作家活動を始めた矢先の昭和17年、持病の喘息のため早世した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
120
『残月記』から思わず読みたくなった訳だが関連は感じられず…それでも恥ずかしながら初・中島敦に繋がってよかった♬まずは「山月記」異能力【月下獣】の基がこんなに唐突な虎への変貌だったとは!?(笑)それが10頁ばかりに過ぎないことにも驚いた!それにしても哀愁漂う苦しさがたまらない…他収録の「李陵」「弟子」ともに識を義を通すべく被る苦渋が印象的だが、それは疾患にて早逝した作者の悔恨ゆえか…司馬遷に孔子と目にして惹かれながら、漢文や中国史に疎い自分が痛恨…最後に「悟浄出世」なんて見れば万城目さんに行くしかないよね!2022/04/25
chimako
67
自身の無知により読了に手間がかかった。決してつまらないのではなく、興味深く早く次を知りたいのに進まなかった。その中 万城目学氏の『悟浄出立』を読んでどうしても 読みたかった『悟浄出世』と『悟浄歎異』こ好みとしては『悟浄歎異』 悟浄の目を通して描かれる悟空、三蔵や猪八戒。悟空の闊達、三蔵の静粛、八戒の愛情が悟浄の(作者の)口にかかると何ともお愛おしくそれぞれが生き生きとまるで自分の脇に座っているように感じる。一番打たれたのは『山月記』なるほど、こういう話だったのか。手元に置いて時々に開きたい一冊。2014/12/29
優希
48
中国古典ベースの作品が殆どでありながら楽しめるのが中島敦という作家だと思わされました。『山月記』は現代文で読んできましたが、文学として読むと孤独を感じます。読む人を選ぶかもしれませんが、名作ぞろいの短編集でした。2023/02/07
れみ
46
今回は「李陵」の司馬遷が主人公の部分を、万城目学さんの「悟浄出立」を読みながらザッと再読。このなかに「虞姫寂静」のあたりもほんの少し書かれていることに気づいた。この文春文庫版は「悟浄出世」と「悟浄歎異」も収録されているのが嬉しい(^^)またそのうちじっくり読みたいけど「光と風と夢」はちょっと読むの大変なんだよね…^^;2014/10/05
れみ
36
舞台で観る機会のあった「悟浄出世」と「悟浄歎異」を文章で読みたいと思っていて見つけた本。言葉が難しかったりして注釈と本文を行ったり来たりしながら読んだけど、今まで知らなかった世界が広がっているのを感じられて良かった。中国の歴史ものとか今まであんまり手に取ったことないけど「李陵」とか「弟子」とか読むとちょっと読んでみたい気になる。2013/08/28