出版社内容情報
難解をもって知られるレヴィナスの画期的な入門書にして、かつ著者の知性の骨格を指し示す貴重な1冊。レヴィナス3部作、第1弾。
内容説明
リトアニア生まれにして、ホロコースト・サヴァイヴァーであるフランス国籍のユダヤ人哲学者、エマニュエル・レヴィナス。研究者の立場からではなく、彼の「自称弟子」として、哲学史に卓絶する圧倒的なテキストをウチダが読み解く。あなたにも、難渋で知られる文章の向こうにレヴィナス先生の暖かな顔が見えてくる。
目次
第1章 他者と主体
第2章 非‐観想的現象学
第3章 愛の現象学(家と女性;女性と主体;引き裂かれた人間)
著者等紹介
内田樹[ウチダタツル]
1950年、東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒。東京都立大学大学院博士課程中退。2011年3月、神戸女学院大学大学院文学研究科教授を退職。現在は同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、映画記号論、武道論。2007年『私家版・ユダヤ文化論』で第6回小林秀雄賞を受賞。『日本辺境論』で新書大賞2010を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うりぼう
37
読み終えるのに2週間ぐらいかかった。全然、判らないけどものすごく面白い。「・・・ができない」と言うためには、俯瞰的な視座がいる。タルムードに論争の運動性と開放性をみ、対話することへの信頼と他者への敬意を識る。レヴィナス効果は、読者をある種の濃厚は「親密さ」に取り込む。「意味し得ること」は「意味していること」を超過し、拡散し、具体性の水準で生起する。アブラハムの孤独は、主体となるが、オデュッセウス的冒険は自己の内にある。他者との出会いは、竹内敏晴先生の「出会いのレッスン」であり、「家族のエチュード」に観る。2011/09/28
いろは
22
「哲学」は「哲学」という分野、教科を教えるのではなく、「哲学」という物の見方、考え方を教えてくれる。全ての物の見方、考え方の根本は哲学にある。といっても過言ではない、とこの作品は教えてくれた。様々な事について沢山述べられているが、私が特に多くを学ぶ事ができたのは、師と弟子についてだった。本当にまず、『師を畏怖する』事から始めなければならないと思った。私の師が、雑談=対話が大事であるという理由も学んだ。他に印象的だったのは、レヴィナスが思う知性について述べられている部分だった。哲学書は本当に、名言だらけだ。2017/07/08
fseigojp
21
少なくとも師弟というものの関係性は了解 こんな難解なのを、よく文庫にできた 文春は偉い2015/09/13
evifrei
19
内田氏によるレヴィナス論第1弾。レヴィナスを理解するには背骨となるユダヤの民・ユダヤ教の理解が必要となるが、本書はその点も含めて抜群に解りやすい。レヴィナスの入門書としてもトップクラスに入るのではないかと思う。レヴィナスを読んだときに感じる『何を言っているのかさっぱり解らないながら、確かにその向こうに見える優しさの顔』という感覚を見事に描き出している。また、経験論ではない現象学としての『女性』の説明には目から鱗が落ちた。『女性は身を引く』という表現を始め誤解に曝されやすい様だが、そういう意味かと驚いた。2020/06/11
タカヒロ
14
本棚に眠りやっと読めた一冊。熊野純彦氏のレヴィナス入門とは全くもって叙述のスタンスが違う。内田氏がレヴィナスに対してそうであったように、読みながら自分自身が内田氏を「師」と感じてしまいそうになっている。噛み砕きにくいレヴィナスの言葉を、レヴィナス以外の様々な思想を迂回して展開してくれる。レヴィナスが何を問題にし、難解な表現を使って本質として何を語ろうとしていたのかに、ちょっと触れられそうな気がする。2023/02/11