内容説明
膳所駅で轢死した老人は事故死だったのか、それとも愛しい孫娘のための覚悟の自殺だったのか。ベテラン保険調査員・村越の執念の調査行が、二転三転の末にたどり着いた真実とは?保険業界の裏側、臓器移植など、現代社会の問題点を見事に描き切った滋味溢れる長篇ミステリー。第13回松本清張賞受賞作。
著者等紹介
広川純[ヒロカワジュン]
1946年京都府生まれ。69年名城大学法学部卒業。会社勤務を経て、86年に保険調査会社へ転職し88年に独立する。2006年に『一応の推定』で、選考委員全員一致で第十三回松本清張賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おいしゃん
101
【松本清張賞作品】読友さんオススメ本。賞に恥じぬ、本格ミステリー。鉄道人身事故で亡くなった男と、彼にかけられた保険金をめぐる、遺族と保険会社の駆け引きを、スリリングに描く。たぶん題材自体は、いかにも実際にありそうなケースであるが、それを本格ミステリーに仕上げた人は、今までいただろうか。会社の営利でなく、あくまで真実を追い求める保険会社調査員の主人公に、好感を持てた。2015/11/03
サム・ミイラ
63
地味である。だが非常に誠実で真面目な作風に好感が持てる。保険ビジネスなら日常どこにでもある案件だと思うが、それでも人ひとりの命には重い意味があることを改めて感じさせてくれた。確かにどこか松本清張を彷彿させる要素を持った良作だった。2015/03/09
ちょろこ
58
静かな推理小説、の一冊。列車事故にあった老人。果たして自殺なのか、事故なのか…保険Gメンが保険金支払い査定のために調査をしていく物語。静かに静かに…真実にたどり着くために…それはまるで列車が走り出すかのよう。ひとつひとつの明らかになる事柄、調査という列車は加速していく。時々、家族の臓器移植への訴えが警笛のように聞こえる。そしてたどり着いた、「真実」という名の終着駅。調査報告書で終わるラストが印象に残った。静かながらも強烈に心に残る…まさにそのような作品だった。2015/10/03
papako
57
本屋さんの押し。ある鉄道事故の死亡者が、傷害保険を請求してきた。自殺か事故か?保険調査員の主人公が調べれば調べるほど、自殺が濃厚になる。しかし、矛盾もある。先入観なしに丁寧に死亡者の足跡をたどる主人公。一応の推定で『自殺』となるが。。。地味だけど、 なかなか読み応えありました。舞台も京阪沿線で馴染みがあり、風景も浮かぶので、とても良かった。保険金、払ってやれよ!と思うけど、契約は契約だから難しいのね。本屋さんの押しに負けて良かった。2015/09/15
はつばあば
55
バイオレンス系ばかり読んでいたせいか、地味。・・というより恥かしいことに頭を慣れさせるのにもたつきました。保険会社としては保険金をなるべくなら支払いたくない意向を優先させる若い竹内と、定年前の調査官村越。保険に入っていてもうっかり死ぬ事もできない。遺書を書きおくなんてことも考えもの。万が一の為にかけた保険も親族に大変な病気を抱えている者でもいればあらぬ疑いをかけられる。まぁ小さな金額しかかけていないし生命保険にも入ってない私が言うのもなんですが。?入ろうと思った頃は保険金殺人が多発。爺様が僕もか・・って。2015/10/13