内容説明
すべてを忘れて、私たちは幸せに近づいたのだろうか…。吉祥寺と、戸越銀座。著者はさまざまな猫たちとの出会いと別れを経験し、生と死、そして忘れえぬ過去の記憶へと思いをめぐらせていく。さりげない日常からつむぎ出される短篇小説のようなエッセイのひとつひとつに、現代への警鐘と内省がにじむ。
目次
第1章 木春菊
第2章 梅
第3章 桜
第4章 百合
第5章 萩
第6章 芒
第7章 彼岸花
第8章 柳
第9章 柊
第10章 松
第11章 雪柳
第12章 躑躅
著者等紹介
星野博美[ホシノヒロミ]
1966年東京都生まれ。会社員、写真家・橋口譲二氏のアシスタントを経てフリーに。2001年『転がる香港に苔は生えない』で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
38
さりげない日常から紡ぎだされるエッセイの割に生死にまつわる話が多いような気がします。東京のあちこちを渡り歩きながら様々な猫たちと出会いと別れを繰り返すことで過去へと思いを馳せていくのが印象的でした。短編小説のような雰囲気が漂う感じがします。生きることは失うことという物悲しさが醸し出されていましたが、読みやすく面白さもありました。2014/09/27
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
35
正しいことを言っているけれど、他者に対する批判(もしくは、批判がましいものを感じさせるような物言い)が多く、読んでいて疲れた。私の今の心身の状態など受け取り方の問題なのかもしれないけれど……。いくつか付箋を貼ったフレーズなどもあったりしたので、おもしろくなかったわけではないです。2016/01/30
羊の国のひつじ
5
死にまつわる話が印象的だった。道端の花束、飛び降り自殺、野良猫の死、しろの死、たまの死、アパートのそばにある葬儀場、大家の死、猫が捕まえてくる鳥の死。日常に潜む死の影。死は生の延長なんだということを思い出させてくれる。私の周りでは死を感られることがないけど、それは私が見ていないからなのか。香港の北角に葬儀場があるから新しいマンションが売れず、古い町並みが残っているというのは知らなかった。私は北角に死の匂いを感じられなかったな。2020/08/27
Maki Uechi
5
★★★☆☆ 猫と暮らす者が素通りできない本です。2016/01/24
駄々猫
3
写真家である星野さんの文章は、優しい素材を扱っていても、鋭くリアルで、心の深いところに切り込んでくる。響くのではなく切り込んでくる。誠実すぎてウソがつけず「あの人、キツイよねえ」と言われてしまう人みたいだ。でも、私はそういう人が好き。ここのとこと「生死」についてずっと考えているので、タイミング的にも読めてよかった。2009/10/02