出版社内容情報
草野球のグラウンドで、空港のロビーで、桜並木の遊歩道で……。ふとした光景から人生の可笑しさを切り取った、とっておきの11篇。
内容説明
何気ない言葉に傷ついたり、理想と現実のギャップに嫌気がさしたり、いきなり頭をもたげてくる過剰な自意識にとまどったり…。生きているかぎり面倒は起こるのだけれど、それも案外わるくないと思える瞬間がある。ふとした光景から“静かな苦笑いのひととき”を抽出した、読むとちょっと元気になる小説集。
著者等紹介
森絵都[モリエト]
1968年東京生まれ。早稲田大学卒業。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。同作品で椋鳩十児童文学賞を受賞。『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞を、『つきのふね』で野間児童文芸賞を、『カラフル』で産経児童出版文化賞を受賞。『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
197
何処にでもいそうな人の何でもない日常の話が11編…だからこそ筆者の力量が問われる短編は「流石!森さん」と思える ユーモアやウイットに富んだ作品集…心に強烈に打ち響く訳ではないが、ジンワリと沁みてくる内容で「あるある!」と頷きながら微笑んでしまうのは、言葉の選択と文章の流れがナチュラルだからだろう。そんな中で少し異質だった『太陽のうた』が、女性の強さと温かさを巧く表現していて印象に残った。200ページ弱なのでサッと読めるが、決して軽さだけでなくて、味わいもコクもある「ショートの見本」と言える佳作。2019/11/15
kishikan
91
今回もまた、森絵都さんの文章力に魅せられててしまう。とても簡潔、だってワンセンテンスがとても短いよね。それでいて、清楚で品の良い文章使いだから、とても爽やかな後味になるのですね。この本は200ページの中に11の短編。なんか本当に日常の話のような気もするのだけれど、それでいてどこか、心当たりがあったり、なるほどなるほど、って思ってしまう。でもやっぱり、僕の日常とはちょっと違うなって思いつつ、それでいてまたやはり親近感。そこが、やはり「森さんだな」って。「夏の森」「その角を過ぎたところに」がお気に入り!2013/07/03
Shinji
90
いろいろな年代の、日常を描いた11のショートストーリー集。人は誰しも夢や希望、そして理想を持っていて、それらを盾に現実と対峙しながら人生を歩んでいる…… この本は、特別ドラマティックじゃない日常にスポットを当てて、1話ごと読み終えたときに苦笑したり、納得したり、唸ったり、と気楽に読める作品でした。表題作「架空の球を追う」での親バカっぷりに微笑んで、「チェリーブロッサム」で、男はいつまで経ってもスケベだ!と納得しました。「パパイヤと五家宝」「夏の森」「二人姉妹」が良かったです♪2015/10/08
エドワード
78
苦笑いをテーマとした11の物語。短編ながら起承転結があり、森絵都さんは本当に人が日常にかいまみせる行動、しぐさ、表情の一瞬の動きをとらえるのがうまい。「チェリーブロッサム」「パパイヤと五家宝」「二人姉妹」での揺れる心。「夏の森」での小学生時代への回帰。夏休みの一瞬の心の動きだ。「ドバイ」や「太陽のうた」はちょっと重いかな。もう若者ではない私には、新宿より断然銀座の優雅さと落ち着いた雰囲気を好みます。2011/08/09
クプクプ
75
短編集。年配の男性の心理を描いた「チェリーブロッサム」、食の小説には定評がある森絵都さんならではの「パパイヤと五家宝」、カップルの理想だけではない恋愛を描いた「ドバイ@建設中」が面白かったです。しかし、短編が独立しているため他の短編とつながりがないので、読むリズムがつかみづらく、少し読んでいて疲れました。川上弘美さんや原田マハさんの短編集と比べると、やや見劣りする印象を感じてしまった読書でした。2021/03/09