内容説明
なにげない日常の延長線上に広がる、この世ならざる世界。そこへ迷い込んでしまった人々の途惑いと陶酔の物語は、夢とも現ともつかぬまに展開していく。詩人、評論家、大学教授としても各分野で多彩な活躍を続ける芥川賞作家の処女小説にして、「新しい幻想文学の誕生」と絶賛を浴びた彫心鏤骨の連作集。
著者等紹介
松浦寿輝[マツウラヒサキ]
1954(昭和29)年東京生まれ。東京大学教授(表象文化論・仏文学)、詩人、小説家。詩集『冬の本』で88年高見順賞受賞。評論『エッフェル塔試論』で95年吉田秀和賞、96年『折口信夫論』で三島由紀夫賞、2000年『知の庭園―19世紀パリの空間装置』で芸術選奨文部大臣賞受賞。同年「花腐し」で芥川賞受賞。05年『あやめ 鰈 ひかがみ』で木山捷平賞、『半島』で読売文学賞を受賞
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
105
芥川賞作家の処女作。濃密な文章の力で夢の世界に連れて行ってくれる力作。漱石の『夢十夜』と似た肌触りを感じた。改行の少ない、息の長い文章を読んでいると頭の芯が緩やかに回転して、目の前にこれまで見たこともないような世界が現れてくる。そこはこの世界とつながりを持ちながら、作者の無意識が作り出した幻想の世界で、あらゆるものが不思議な存在感を持っていた。何気ない散歩がいつの間にかエロチックな陶酔に変わる冒頭の「胡蝶骨」と、読み手が結末で深淵を覗き込むことになるラストの「千日手」が好み。2014/11/09
メタボン
39
☆☆☆☆ 存在の不確かさ、記憶の曖昧さ、偶然にたどり着いた場所、そんな幻惑されるような読書体験。何よりも文章の濃度が良い。詩人の文章。1篇が10ページ程度という長さも幻惑体験に丁度良いのだろうか。雰囲気は違うが内田百閒を読む味わいにも通じる。何か月ぶりかで訪ねた喫茶店がもうやっていなかった「並木」、老境の逍遥「雨蕭蕭」、女の手の感触がずっとつきまとう「アノマロカリス」、唐突に存在が薄れる瞬間「千日手」が特に良かった。2022/02/03
うえうえ
17
どれも10ページほどの短編集。すばらしい。幻想的で惹きこまれる。うねうねした文章が心地よい。中井英夫の短編集もよかったが、こちらの方がわかりやすく和の感じがして好みだった。2019/10/30
たぬ
15
☆3.5 14編を収録。1話目、2話目と主人公がロリコンおじさんでうわ失敗したかと若干後悔する私。しかし続けて読んでいくと昔の知人との思い出、旅先での出来事、気になる風景の一部分などを淡々と綴った話が出てきてくれた。語られる中に出てくるあの人やこの人ははっきり言及はされていないがすでに死んでいるのでは?と思わせる。ややクールな筆致はわりと好みだけど、ちょいちょい女性器だの女陰だの出てきて結局は気持ち悪いが残った。2026/02/25
しずかな午後
11
小説家としての松浦寿輝のデビュー作であり、ほんの短い掌編小説が十四篇おさめてある。自分がこれまで読んできた松浦寿輝の小説にも出てきたイメージたち、女体の白さ、水の匂い、宝石のかがやき、廃墟の静けさ、酒や薬による酩酊、自己が失われていくことのよろこび、それらが次々にゆるやかに目の前に現れては消えていく。ただひたすらにすばらしい。2024/09/13




