内容説明
画家として名声を得た親友への複雑な思いを抱きながら、しがない肖像画家として生計を立てる男。夫のため、会社の重役を相手に注文取りに奔走する妻は、次第に妖しい色気を増していく。疑心暗鬼にかられた男が陥った罠とは―。男女の業を炙り出した表題作のほか「与えられた生」など全四篇を収めた短篇集。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生まれる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第5回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92(平成4)年8月死去。98年8月、北九州市に「松本清張記念館」が開館した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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RED FOX
9
「通過する客」とかタイトルが渋い。1968-70年ごろの短編4つ。時代は感じますが、ゾワゾワと面白いのは不変なセイチョー節。今のベストセラーの50年後や50年後のベストセラーはどんなものか、とか思わず妄想してしまった。2017/05/18
井戸端アンジェリか
8
短篇集。 バカだなぁ~と鼻で笑いながら前3編を読みましたら、最後の「首相官邸」だけ別モノでした。2月26日の事を見習医官から見た話。兵士ではないだけに至って呑気な感じで、読始当初はその事件に続くのを気が付かなかった。K中尉の冷たさの奥に隠された気持ち、ただの偉ぶった上官だと思っていた木村も私もバカだな。 前3編に付いて解説の志麻子さん曰く「大人しい者ほど屁が臭い」。最高2014/05/16
Nozomi Masuko
6
松本清張の短編集。表題作では、しがない肖像画家として生計を立てる男と、その絵を高い画料で売りさばくために会社の重役相手に色気を増して捕まえる妻。疑心暗鬼になった夫が罠を仕掛けるー。4作品しか収録がない中で、2作品はあまり好みでなかったので満足度は低かったかな。2015/11/30
そうたそ
5
★★☆☆☆
Ryoko
3
再読。人間の深い葛藤する心理、鬱屈した心理がすごくよくわかる短編集。癌になり、なんとしてでも生きたいと思った男が若い愛人を手に入れ新しい人生に夢を持った後に突き落とされる「与えられた生」 。生活のために肖像画を書いている売れない画家とその注文を取るために営業している妻。はっきりとした確証はないものの妻の行動に疑問を持ち鬱屈したものを抱えていく心理を描いた「虚線の下絵」。この2作品が面白かった。「首相官邸」は読み始めるも、興味が持てず途中で断念。2019/11/22