出版社内容情報
「普通の中学生」が、なぜ人を殺したのか──。世界への違和感を抱え、殺人を犯した3人の少年たちの心の軌跡を追う長篇犯罪小説。
内容説明
社会復帰後も失意の中にいた久藤は、友人水嶋の提案で、銀行強盗を計画し、神原と葛城にも協力を依頼する。三人は、神原の提案で少年院時代の知り合いである米山と黒沢にも協力を依頼する。三人の迷える魂の彷徨の果てにあるものとは?ミステリーで社会に一石を投じる著者の真骨頂と言える金字塔的傑作。
著者等紹介
貫井徳郎[ヌクイトクロウ]
昭和43(1968)年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。平成5(1993)年に、第4回鮎川哲也賞の最終候補作となった「慟哭」で作家デビュー。22(2010)年に、『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
191
3人の少年が犯した殺人を描く事で「生き方を問う」作品。誰もが抱えている「瘴気」と「孤独」に「どう向き合うか?」と問いかけてくるようで、重苦しくて癒される読書ではないが、読み応えはタップリ。彼らの思考は頷ける部分も多く、我が事のように悩ましい。当初は、純朴な少年に思えた神原が我欲にまみれ醜く変容していく様は、誰もが陥る闇のようで怖い。賛否がある、銀行強盗の件は3人を対比させる上でも重要だし、単純にサスペンスが盛り上がって面白かった。好みとしては、貫井さんの代表作とは思えないが、貫井さんらしい作品と言える。2017/12/04
あも
115
1、2部からこの展開は想像がつかず。計1300頁超えが嘘のように一気読み。当初は一番同情していた尚彦のクズ度加速も、逆に一番クズだった久藤に魅力を感じるのも予想外。最終盤、小さな棘のように引っかかっていた伏線もバシっと回収。重なりはすれど交わりはしなかった3人はやはりそれぞれ別の結末を迎える。罪と罰の話ではある。内容は重い。が、贖罪とは?に対する答えはきっとこの物語の先の話。特に3部はテーマ性よりも良質のクライムノベルとして非常に楽しめた。大作でありながらもっと長く読みたかったとまで感じさせる著者に脱帽。2018/05/29
りゅう☆
97
水嶋の提案で銀行強盗計画が持ち上がる。破滅へと向かうために…。彩の気持ちの変化、黒田と米山の加入、増田との再会、聖美叔母の同居提案、英里との体の関係…。嫉妬心は沸かないが感謝の念に駆られ何とかしたいと思う気持ちに矛盾を感じ、叔母への嫌悪感に対する暴言の凄惨さに恐怖が募り、柏木の呪縛にもがき続ける様が不憫。葛城の思惑通りに進む銀行強盗、そこに楽しさを見出した神原の歪みに畏怖の念を抱く。まさに冷静な葛城に非情な神原。また誰が何のために3人に陰湿な嫌がらせをしたのか?広げた風呂敷が畳まれるたびその真相に驚く。→2018/11/30
Tsuyoshi
84
下巻読了。少年院を出た後、新たな犯罪に駆り立てる契機となった三人に対する執拗な嫌がらせ。その全貌が明らかとなるとともに、被害者側の激しい憎悪に触れる形で改めて自らの罪に向き合い償う気持ちを持ち得る結末に。被害者感情、生活の変化ぶりを目の当たりにしてしまうとやはり現行の少年犯罪に対する扱い、更正プログラム等難しい問題である事を再認識させられる。2017/11/14
nobby
81
3人が事を起こすまでの障害や葛藤に夢中で、中々の厚さの440頁を一気読み。訝しい人物の登場や思わぬ好転に一喜一憂しながら、最後は予想通りの報われない結末が訪れる。久藤・葛城・神原それぞれの迎えた行く末の伏線回収も納得。それぞれの立場での想いが交錯しない様子がせつない。叫べない故の“空白”、彼らが少しでも埋める場所があったなら…最後の佳津音の言葉に違和感あるもグッとくる。2014/12/11