内容説明
正しい意見を言ったからといって、人は聞いてくれるわけじゃない。大切なのは、「その言葉が聞き手に届いて、そこから何かが始まる」こと。そんな大人の対話法と思考を伝授。精神年齢の算出法から、敬意の受け取り方、呪いのコミュニケーションの避け方まで、話を複雑にし、「ねじれ」を活かす効用を伝える名著。
目次
第1章 はじめて大人になる人へ(教養喪失と江口寿史現象;ヴァーチャル爺のすすめ ほか)
第2章 大人の思考法(「自分らしく」あるのは当然か;後悔、後に立たず ほか)
第3章 大人の作法(話を複雑にすることの効用;呪いのコミュニケーション ほか)
第4章 大人の常識(諸行無常の高度情報化社会;無事なのに国家有事 ほか)
著者等紹介
内田樹[ウチダタツル]
1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒。東京都立大学大学院博士課程中退。現在神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。フランス現代思想と武道に精通した独自の視点が注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
141
内田樹氏は「あとがき」で、書いたものの価値を定量するに際して「ある程度の期間読むに堪えうる」ことが重要な指標だと語っている。本書の元になったエッセイが発表されたのが'01年~'03年なので、もう10数年も前ということになるが、今これを読んでも十分に今日的だ。例えば改憲の問題などは、このままでもあたかも今語られたかのごとくに鮮度を失っていない。本書の全体で著者が試みたのは「大人の思考と行動」とはどういうものなのかを若者たちに語ったもの。要は、思考する方法について、懇切丁寧な解説がなされているということだ。2015/08/21
おさむ
48
①「現実が複雑であるときは、話も複雑にするのがことの筋道というものである」。これだけ現代社会が複雑化しているのに、簡単な話ばかりがもてはやされているのは、どこかおかしいですね。②「どんな場所でもそこで獲得できる社会的リソースは、そこで過ごした時間の密度とそこに投じた努力の対価である」。他人にこきつかわれずに済むには地道な努力の積み重ねしかないんですね。③「人間は自身の主張に馴染まない情報を排除して都合のいい情報だけを集め、総じて客観的判断のつもりで主観的願望を語る生き物」。この事実を常に意識したいもの。2016/01/08
ネギっ子gen
45
多くはブログ「内田樹の研究室」から。「たいへんに長いまえがき」に、<私がやろうとしているのは、「大人の思考と行動」とはどういうものかについて、「若者たち」に人類学的なリサーチレポートを提出すること/私は「大人の思考と行動の専門家」であるが、それは私自身が「大人って何だろう?」という問いにこだわりがあって、これまで長い間をかけてそれを集中的に研究してきたからである/この本は、そのような『大人文化の専門家』による『敵情視察レポート』としてお若い方々にお読みいただけたらと思う>。解説が橋本治ということで購入。⇒2022/01/28
たかやん
24
年末年始で潤ったブックオフの本棚から内田先生の著作を狙い撃ちしたうちの1つ。本書は、「大人の思考と行動」とはどういうものか、をリサーチレポートのように若者へ宛てた1冊。先生の本は今回で7冊目にして、ハッとさせられる一文がそこらに転がっている。「人間は必ずその人が必要とするときに必要とする本に出会う(p55)」とあるだけに、この本自体がそういう気にさせられます。2018/01/14
ぱなま(さなぎ)
19
久々に内田さんの本を読みました。わたしが普段採用している考え方に、内田さんから授けられた方向性の指針みたいなものが知らぬ間に影響していたようです。著者自身が意識する通り、題材自体は時勢の要請からくるものであってもそこで提示される枠組自体は普遍的な事柄なので、既存の読者にはすでにおなじみの考え方も多いですが、今回はっとしたのは「娼婦」についての論説。ずっとモヤモヤとしたままで自分の中でも答えが出せずにいたことだけれど、モヤモヤとしたままでもいいのかなと思えることで少し前を向けるようにもなるのだな、と。2016/11/04