内容説明
事業に失敗し借金取りに追われ、男は北海道の兄を頼って輓曳競馬の厩舎に逃げ込む。馬を愛し、黙黙と世話をする男たち。そして、1トン近い橇を引き、障害を必死に登る馬たち。目を剥き息を荒らげようやく一歩を踏み出す馬、膝をついて立ち止まる馬…。その姿を見る男の中に、ある決意が生まれる。
著者等紹介
鳴海章[ナルミショウ]
1958年北海道帯広生まれ。大学卒業後、PR会社に勤務。在職中の91年に航空サスペンス小説「ナイト・ダンサー」で第37回江戸川乱歩賞を受賞。航空冒険小説、ハードボイルド、警察小説など幅広く活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あなほりふくろう
21
長い人生に躓いたとき、立ち帰る場所があるというのはとても幸せなことだと思う。そこで人は、自分はとるに足らないちっぽけな存在なんだと再び気付き、だからまた立ち向かっていけばいいのだと立ち上がることができる。第二障害の前で息を整えて、挑んでいけばいい。厩舎を出ていく矢崎の姿に、自分も励まされる思いだった。2014/03/03
あきあかね
17
小説を映画化した場合、限られた時間内に収めるために人物の心情の描写が粗くなったり、ストーリーの一部分だけの切り取りがなされがちだが、本書を原作とした映画『雪に願うこと』は原作の肝となる部分を的確に捉えた上で、一層洗練され、結晶のような煌めきを放っている。 物語はいたってシンプルで、東京で事業に失敗し、仕事も家庭も資産も失った主人公の学が、帯広でばんえい競馬の調教師をしている兄の元を久方ぶりに訪れ、厩舎での暮らしを通じて、再び進み出すまでを描く。一見よくあるストーリーであるにも関わらず、⇒2022/12/19
WATA
10
北海道で行われている「ばんえい競馬」をモチーフとした小説。重り付きの大きなソリを引きながらコースを走る馬と、その馬の世話をする厩舎関係者たち、そして大きな借金を抱えてそこに転がり込んだ男の話。短時間で読めてスッキリとした読後感。年末年始のなかで一番の当たり本でした。そういえば今年は午年ですね。2014/01/09
maverick, or stranger. still an outsider.
5
あるお知り合いの「良かったなあ…」という染み染みとした、呟きにも似た感想に俄然興味が湧き、絶版で出版社にも新品が無く、入手不可能だと分かったら尚更欲しくなり、ブクオフオンラインでやっとのことで手に入れた一冊。ただ“面白い”では触手が動かなかったと思う。「雪に願うこと」というタイトルで映画化されている様ですが、あとがきから推測するも、映画の内容はだいぶ変えられているとの事です。ストーリーにてらった所は無く、10日間位の物語が時系列に沿って流れて行きます。ちと古いですが弘兼憲史氏「人間交差点」辺りにありそう。2018/09/18
はじめさん
3
来年が午年ということで・・・東京で事業に失敗し、二度と帰らぬはずの北海道に帰郷した男。借金取りに追われる身で彼がたどりついたのは、兄が調教師を務めるばんえい馬の厩舎だった。 / レースの駆け引きや、厩舎経営の方法とかが馴染みないから珍しかった。何百馬力のトラクターも登れない斜面を重たいソリを引いて登ってゆく馬たち。一馬力>百馬力。2013/12/26
-
- 和書
- かぐわしき食卓のカノン