内容説明
小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが…。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた8編。
著者等紹介
加納朋子[カノウトモコ]
昭和41(1966)年、福岡県北九州市生まれ。文教大学女子短期大学部卒業後、化学メーカーに勤務。平成4年、「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞受賞。平成6年発表の短編「ガラスの麒麟」で、第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)受賞。平成7年に退社して作家専業となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
300
一気読み。小説とはどんなにありそうにない話でも、時空をすっ飛ばしてでも、意図通りの決着をつけてくれる。感動もある。おもしろさもある。一見ミステリっぽくない作品群に出くわして、それでもミステリだったりする意外さ。思わず心が温まったり、次の話、次の次の話、と進んで行くうちに、思わず心泣きする。巻末に近づくと、再び心安まる話に変わっていく。最初に読んだ話の、あのほほえましさにも。そうそう、ザリガニの脱皮は私も子どものころに見ました。そしてフータと同じように驚きました。2020/03/28
yu
295
帯に書いてあるとおり、ザリガニで泣くとは思わなかった。バルタン、いいやつだなぁ。家族がそれぞれを思いやっているけれどなかなか好転しない実情に、バルタンがきっと光になったんだろうなぁと。 表題作モノレールねこもいい。2回目ですが、また読みたいと思います。2012/05/23
さてさて
271
『人生が一変するような報せなんて、世の中そうそうあるもんじゃない。なのにそれは、よりによって私の元へ、ある日突然やって来た』。読者を強く引きつけるインパクトのある冒頭から開始される八つの短編が収録されたこの作品。そこには、八つの短編がそれぞれに作り出す魅力溢れる作品世界がありました。インパクトある動物たちの登場にすっかり惹きつけられるこの作品。読後感の良さに読んで良かった感に包まれるこの作品。とても優しく、とても丁寧に描かれていく加納朋子さんならではの物語世界にすっかり虜にさせられた素晴らしい作品でした。2024/10/27
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
265
8篇を収めた宝石箱のような短篇集。一つの物語を読み終えるたび、心に積み重なっていく感情をどう表せばいいんだろう。ふと浮かんだ言葉は日本語としては不適切だけど〈ひんやりとして暖かい〉。各物語の登場人物は皆、大切なものを喪ってしまった人々だ。ペンパルを。幼い頃の記憶を。笑顔を。家族を。少々のラッキーではとても取り返せないような喪失の物語もある。それでも、胸の奥にポッと灯りが点るような読後感。まるで寓話のように、それぞれの物語には結びの一行が添えられていて、それが優しい手のように、心を抱きしめてくれる気がする。2015/01/10
射手座の天使あきちゃん
260
餌をやっていた猫、祖父母や両親、最愛の娘、果てはザリガニまで色々な死にまつわる大人メルヘンです。 ちょっぴり胸が痛んだり寂しくなったりするけれど、最後はクスっと笑えたり、小さな希望の樹に蕾が膨らんでいたり、よし明日は頑張るよん♪て言いたくなる作品ですぅ!!。 v(^_^)2010/10/10