出版社内容情報
出産のために離れて暮らす母親を慕う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた作品ほか寒い季節を温かくしてくれる12の冬の物語。
内容説明
出産のために離れて暮らす母親のことを想う5歳の女の子の素敵なクリスマスを描いた『サンタ・エクスプレス』ほか、「ひとの“想い”を信じていなければ、小説は書けない気がする」という著者が、普通の人々の小さくて大きな世界を季節ごとに描き出す「季節風」シリーズの「冬」物語。寒い季節を暖かくしてくれる12篇を収録。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
昭和38(1963)年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。91年『ビフォア・ラン』で作家デビュー。99年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。10年には『十字架』で第44回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
192
シーズンだし、ということで読んでみた。うーん、大好きだったんだけどな、重松さん。とくに「ビタミンF」を読んだころは。最近ではもう、あーこういう作風だよな、重松さんだしな、という感じ。「バレンタイン」の話しなどはうっとうしすぎ。こんな親子がいたら、気持ち悪い。とはいえ、やっぱり年老いた母を地方都市に置いて東京暮らしをしている「ネコはコタツで」とか大学時代の別れを描いた「コーヒーもう一杯」なんかは、自分の体験と照らし合わせて、グッときてしまうわけで。これからも機会あれば読んでしまうんだろうな。2015/12/14
うりぼう
125
冬って、ホントいろいろなんだ。クリスマス、受験、星座、焼き芋、おせち、夜回り、バレンタイン、雪、コタツ、節分、ミカン、ミル。春を待つ季節、それは、夜明けのとき。何かが終わり、一歩を踏み出す刹那。そんなときは、ふと後を振り返り、風を感じる。「かまくら」を想い、「マンデリン」が香り立ち、「こだま」が振るえ、「こけし」を落とす。「ぬるい茶」が合い、「ぶち」喜び、「義理」を貰い、「ベンチ」に眠る。「濁点」が大事で、「栗」がなく、「相棒」と呼ばれ、「鬼4匹」揃い踏み。誰の心にもカオルのおじさんが居て、明日を迎える。2010/12/22
ふじさん
102
「ひとの想いを信じなければ、小説は書けない気がする」という著者が描く、寒い冬の季節を暖かくしてくれる短編集。懐かしい小中学校の時代、高校入試、大学受験、浪人、部活動の辛い思い出、就職、結婚、辛さくも長く充実した仕事三昧の人生、息子の自立・結婚、孫の誕生、両親との別れ、親しい友人との悲しい別れ等、自分の人生と重なる部分が多く、読んでいて心に染み入る内容が多かった。北海道の冬は辛く厳しいが、それだけ他では味わえない人生がある。ユーモアを交えながらも語られるの個々の話は、共感できると共に何か懐かしさを感じた。2022/12/08
じいじ
98
また、重松節にほっこりと浸りたくなった。この四部作『季節風』春・夏・秋・冬のうちから、スタートは「冬」にする。四季の中で、重松さんが最も好きなのは「冬」だそうだ。私も学生時代はやっぱり冬でした。当時凝っていたスキーが存分にできるから…。12の短篇のうちで、つぎの2篇がお気に入り。コーヒー豆を吟味し、一回分をミルで挽いて、カップはその日の気分で…、コーヒーに拘っていた頃を思い出させる【コーヒーもう一杯】。寒い冬も去って、まもなく温かい春が来るよ、というテーマの5話【一陽来復】。年が明けたら「春」を読もう。2022/11/24
masa
87
著者の作品を読むのは久々だった。文章が美しいとか仕掛けが巧いとかではない。ただ、とにかく唯一無二にあたたかい。それも遠赤外線的であざとさのないぬくもりなのだ。まるで北風と力比べする太陽。著者は容赦ない孤独を知っていて、包み隠さない本当の情けなさみたいなものまで赤裸々に描くから、どんどん心が脱がされる。どうしてみんな簡単にできることが自分にはできないのだろうと、漫画の主人公のように正しい行動が取れないのだろうと、自身に失望し真剣に悩んだ日々を懐かしく思い出す。そうだ、僕はこんな物語を書ける大人に憧れたんだ。2019/12/08