出版社内容情報
女性作家キミコは、海辺の町で出会った少女から自らの妊娠を告げられる。ばなな文学の新たな一歩をしるす、祈りに満ちた長篇小説。
内容説明
恋人と初めて結ばれたあと、東京を離れ、傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。外の世界から切り離された、忙しくも静かな生活。その後訪れた別荘で、キミコは自分が妊娠していることを思いがけない人物から告げられる。まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、やさしく、繊細に描いた長編小説。
著者等紹介
よしもとばなな[ヨシモトバナナ]
1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。87年、「キッチン」で海燕新人文学賞、88年、単行本『キッチン』所収の「ムーンライト・シャドウ」で泉鏡花文学賞、89年、『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
128
要するに小説家が子供を授かった話!よしもとばななさんの作品は何冊か読んでますが、今回、オカルト的な内容もあり、それがどうもなじめなかったんですが、終盤に進むにつれて、よしもとばななさん特有の優しい文章に魅了されて、一気に読めました(^^)よしもとばばなさん、オバケとかオカルト的なのが好きなのかな(笑)オカルト的な部分はちょっと苦手でしたが、どんどん母親になっていく姿には魅了されました(^^)よしもとばななさんの作品読了後は、つい笑顔になりほっこりします(^-^)2016/12/24
ひろちゃん
92
よしもとばななさんの文章で意外と軽く読めるけど、結構ずしっとくるなあ……2015/11/09
優希
83
文庫で再読です。静かな生活の中で自分の妊娠を知る気持ちが何故かあたたかく感じました。恋人と初めて結ばれた後、離れていく切なさの中で、まだ生まれない命を大切にしている様子が愛おしく見えます。魂との出会いはとても優しいものなのですね。スピリチュアルな雰囲気がありつつも、穏やかな世界観に引き込まれました。2018/05/05
あも
55
第7弾。とりとめのない夢を見ているような不思議な話だった。ばななさんの小説に良く出てくる、奔放で自立して、完結した女性が主人公。インフルエンザにかかり、母のような妻のような存在と暮らす男性と付き合い、イルカの夢を見ながら子供を産む。著者は感受性の塊のような作家だと思うが、本作はかなりスピリチュアル。うつしよではなくかくりよに半歩足を踏み入れて、両方の世界を行き来するような感覚。現実に魂という物質があるかどうかは分からないけれど、何かを突き詰めようとしたとき、理屈で説明できない領域に入ることはあるのだろう。2017/06/20
風眠
45
久しぶりに再読。やっぱりいい、やっぱり好き。そんで命ってすごいって思う。よしもとばなな的には妊娠中に書いたので最も自分らしくないと思っているようだけど、お腹に命が宿るって一大事だもの、変わって当然と思う。まだ妊娠しているかどうかも分からない段階から、命を守ろうとする本能みたいな不思議なものに導かれて、死の気配がする場所を避けようとしたり、自然とお腹に手を当てていたり、不思議な夢を見たり、そういうスピリチュアルな雰囲気はやっぱりばななっぽいと思う。命の強靭さと、人と人とのつながりを信じてみたくなる物語。2012/09/16