内容説明
緻密な理論、滾る情熱、そしてそれらを包む深い愛情…。「闘争の倫理」を思索しつづけ、日本の、そして早稲田のラグビーを幾度も危地から救った名将・大西鉄之祐。その79年の生涯を達意の文章で描き、2002年度「ナンバーが選ぶスポーツノンフィクション」第1位、ミズノスポーツライター賞の二冠に輝いた傑作。
目次
1 インゴール組―楕円球にしがみついて
2 戦前のラグビー―「ゆさぶり」対「押しまくり」
3 ま、銃で撃つんだが―「闘争の倫理」の原点
4 「展開、接近、連続」―オールブラックス・ジュニア戦勝利まで
5 歴史の創造者たれ―母国イングランドとの死闘
6 接近の極致―横井章
7 テツノスケに教わったんや―小笠原博
8 デューイを突き抜ける―勝負の哲学
9 大西アマチュアリズム―決闘の渦中から
10 体協の名場面―モスクワ五輪ボイコットをめぐって
11 鉄になる―ドスの青春
12 愛情と冷徹、信頼と独断―魔術の実相
著者等紹介
藤島大[フジシマダイ]
1961年、東京都に生まれる。都立秋川高校、早稲田大学ではラグビー部に所属。86年、スポーツニッポン新聞東京本社に入社、おもにラグビー、ボクシングを担当する。92年に退社。以後、文筆業のかたわら、都立国立高校、早稲田大学ラグビー部のコーチを務める。2002年『知と熱』により第12回ミズノスポーツライター賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
柔
15
ラグビーに人生を重ね合わせた哲学。世界のラグビーを真似するのではなく、オリジナルを作れ。相手の強いところを潰し、こちらの強いところをぶつけていく。「戦法に絶対はない。しかし絶対を信じないチームは失敗する」金のためのプロは反対していたが、金なんて気にしない新しいプロは認める。時代の変化も受け入れていたんだと思う。スポーツはバカじゃできない。目的を決めて、目的達成のために情報を集める。構成ができたら行動する。体だけじゃ勝てないんです。未知のものにぶち当たった時の対処法を覚える最善の策がスポーツである。2023/06/28
夜郎自大
8
著者はラグビー解説者で、チームや選手の歴史的背景を元にプレー解説する意義深い語り口。大学ラグビー出身経営者が今時のPDCA回す的なフレーズを皮肉り、この本を読んで実態を体感した方が良いと言っている。絶対不利な対戦相手に必勝するために、現有戦力を潜在力含めて解析してポジション配置し、戦術戦略を立てる。日にち単位ではなく、時間単位で練習計画を練る。練習試合で修正点を見つけて潰す。選手を鼓舞する。選手に情があるが判断は冷徹。大西鐡之祐氏の壮絶な戦争体験からくるスポーツ観は強烈で、戦争の怖さが胃に重く乗ってくる。2023/04/03
ぶ~よん
2
明治の北島忠治と双璧を成す早稲田の指導者、大西鐵之祐の人生やラグビー観を、教え子の藤島大さんが解説する。鉄ではなく、鐵。この字は、鉄鋼マンの端くれである私にとって、神聖な字である。大西鐵之祐先生が、早稲田大学の鋳物研究所に勤務されていたことを初めて知った。現在は材料技術研究所と名前を変えているが、私が学生時代に仲間と研究生活を送った場所である。戦法に絶対はない。だが絶対を信じないチームは敗北する。信は力なり。僕は、自分が正しいと信じて物事を突き通したことがない。これって、芯がブレてるってことなんだな。2015/09/13
イケタク
2
評価⭐︎⭐︎⭐︎ 今や大学ラグビーと言えば帝京大学が圧倒的な強さを長く維持しているが、かつては大学ラグビー=早明と言う時代があった。 その早稲田ラグビーを作り上げたのが知将の物語。
しんたろー
1
すごい。良書。2017/03/02