文春文庫
飆風

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  • サイズ 文庫判/ページ数 221p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167654061
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

無能者になって生家に戻った「私」を迎える母親の呪詛。文学を志しながら果たせず、友人や女を騙し、蔑まれ、どん底まで落ちる「私」。精神を病んだ作家と妻である詩人の暮らし―。自身の半生を虚実の中に描く小説三篇に加え、独自の小説作法を語り、西行、漱石、深澤七郎を論じた講演「私の小説論」を収録。

著者等紹介

車谷長吉[クルマタニチョウキツ]
昭和20年、兵庫県飾磨市(現・姫路市)生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。広告代理店、料理屋などで働きながら小説家を目指す。平成5年『鹽壷の匙』で三島由紀夫賞と芸術選奨文部大臣新人賞、平成9年『漂流物』で平林たい子文学賞、平成10年『赤目四十六瀧心中未遂』で直木賞を受賞。平成13年には「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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ω

44
車谷先生の小説論が読めて嬉しい(^ω^) 「小説は、小説を書くことによって、まず一番に作者みずからが傷つかなければなりません。血を流さなければなりません。私はいつ命を失ってもよい、そういう精神で小説を書いて来ました。」私は、先生のそんな言葉が骨身に沁みました。2021/04/21

メタボン

31
☆☆☆☆ 芥川と同じ強迫神経症に苛まれる中、凶々しい作品を書き続ける私小説作家。どこまでが実なのかわからぬ虚実綯い交ぜの作品におどろおどろしくも魅入られてしまった。「桃の実ひとつ」の因業や、「密告(たれこみ)」の後味の悪さも、車谷だからこそ書ける業(わざ)。楢山節考を推す「私の小説論」も読み応え(講演だから聴き応えか)充分。2024/01/29

ふじみどり

19
逃げても逃げ切れないと観念して真っ向勝負をしに東京へ戻った男を待っていた苦悶。その先に「赤目四十八瀧心中未遂」がある。あたり前であるがこのような背景は思いがけもしなかった。なにか物凄い切実さが怒濤の風になって打ち付ける。ぱらぱらと私の仮面がひび割れる。風は流れる力であるはずなのにいつまでもそこに居座っている。因業か。2012/05/29

やまはるか

18
広辞苑になく日本国語大辞典につむじ風とあった。短編集なれど其々の物語と作家の経歴とが一致する。講演で「人の嫁はんと、三回も姦通事件をやらかした」(上智大講演録)とまで述べ、どこまでも私小説作家を貫いている。そう心得て読むと大変に重い。「飆風」にある強迫神経症の「廊下は流れており、靴下や下駄、スリッパが空中を飛んでいる」描写も、神経症患者の体験として読んだ。他を認めないリアリティがあった。「生きるか死ぬか、自分の命と小説を引き換えにする覚悟で書いて来ました。」カバーにも「自身の半生を虚実に描く」とある。 2022/01/19

三柴ゆよし

11
「なぜ人は小説を書くのか。人は死ぬからです。またこの世のすべての生物の中で、みずからがいずれ死ぬことを知っているのは、人間だけだからです。その悲しみに堪えることが、生きるということです」。驚愕した。書くこと、すなわち小説家にとっては「生きる」ことの罪業に、これほど自覚的な人がいたとは。車谷長吉は、アンチ・ヒューマニズムの極北を直走っている。なんとカッコイイ悪人がいたものか。まさに怨念の作家だ。大袈裟ではなく、僕はこの人に一生ついていこうと決めた。2009/07/02

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