内容説明
絵描きの「俺」の趣味はランパブ通い。高校を中途で廃し、浪費家で夢見がちな性格のうえ、労働が大嫌い。金に困り、自分より劣る絵なのに認められ成功し、自分が好きな女と結婚している吉原に借りにいってしまうが…。現実と想像が交錯し、時空間を超える世界を描いた芥川賞受賞の表題作と他一篇を収録。
著者等紹介
町田康[マチダコウ]
1962年大阪府生まれ。高校時代より町田町蔵の名で音楽活動を始め、81年、パンクバンド「INU」の『メシ喰うな』でレコードデビュー。俳優としても活躍。96年「文学界」に発表した処女小説『くっすん大黒』で97年に第19回野間文芸新人賞、第7回ドゥマゴ文学賞を受賞。2000年『きれぎれ』で第123回芥川賞を受賞、2001年には詩集『土間の四十八滝』で第9回萩原朔太郎賞を受賞、2002年『権現の踊り子』にて第28回川端康成文学賞を受賞
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感想・レビュー
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遥かなる想い
243
123回(平成12年度上半期) 芥川賞受賞。 全編に漂う蠢くような 描写が印象的な本。 主人公である「私」の 心の中は、ぬめっとした悪意に 満ちており、読んでいて正直 気持ちのよいものでは なかった。この物語のどこが 評価されたのだろうか。 底辺でもがきながら、でも 抜け出す努力もせず、空を 見上げている…雰囲気は 伝わるが、話の筋が読めない …何が何だかわからないまま、 読み終わった。 2014/04/05
ヴェネツィア
210
2000年上半期芥川賞受賞作。町田康は初読。破滅型1人称やぶれかぶれ語りといった文体。そういったところは、ちょっと太宰を思わせる。没落してゆくところなども重なるし。ただし、太宰の文体が読者を共犯関係に置くことで共感性を獲得して行くのに対して、町田のそれは読者の思考とは関わりなく、妄想し暴走する。つまり、あくまでも自己の思考回路の中で完結するのだ。『異邦人』も、深草少将(本文では鎌草少将)も、意味不明の「ツンドラに鶴」も、そうした諸々は混沌としながら、猛烈な語りのスピードの内にエンディングまで運ばれてゆく。2013/06/13
absinthe
202
脱力系純文学?とにかく主人公の脱力ぶりが半端ではない。信頼できない語り手ならぬ頼りない語り手?全人生をかけて精神的勝利法を獲得する。ここまでくると『阿Q正伝』や『狂人日記』に匹敵しそうな名作の予感。勇ましい夢想で自分を奮い立たせてみても、正直に出て来るのは卑屈な態度ばかり。建前と本音が完全に乖離したかと思うと、実は深淵では繋がっていて、これが人間の本性なのかと。良くできた作品とは思うが、absintheには合わなかった…2021/05/18
青乃108号
161
くどい様だけど、我が心の作家、町田康の短編2編。ストーリーはあるにはあるけどそれほど重要ではない。町田の脳内イメージを克明に活写する、饒舌ではあるがどこか言葉足らずの。あくまで即興性を重視し音楽性を廃した楽曲に似た最初は取っ付きにくいがじきに体を揺らしてくる変にリズミカルな文体の。くわあ。やっぱり麻薬、合法ドラッグ。くんくんくる。ついでに言うと2000年、第123回芥川賞受賞作。いやすごいわ。2023/04/19
馨
148
他の作品と比べて、空想が入っていたりするのでやや読みづらい感じもありました。でも町田康らしい作品でした。 私の日頃の話し方が結構町田康の文章の表現に似ているところがあり、ところどころ私が書いたのかと思え勝手な親近感を抱いています。しかしこの方の作品はどことなくパンクっぽいですね。2016/04/16