出版社内容情報
19世紀半ばの欧米で起きた心霊現象ブーム。ノーベル賞科学者の研究チームが能力の限りを尽くして実証した「死後の世界」とは?
内容説明
19世紀半ば、欧米で心霊現象への関心が高まり降霊会がブームになった。多くの科学者が否定するなか、ケンブリッジ大を中心とするノーベル賞学者2人を含む研究会が、本気で幽霊の存在を証明しようとした。時に協力し合い時に見解の相違を見つつ、様々な心霊現象の解明に挑んだ彼らが行きついた「死後の世界」とは。
目次
タイタス事件
ポルターガイストと幽霊屋敷
「科学vs宗教」の時代
ケンブリッジの三人組
サイコメトリー
死の間際のメッセージ
幻覚統計調査
テレパシーか、霊との交信か
エクトプラズム
よみがえった霊
死の予言
交差通信
終わりなき探求
著者等紹介
ブラム,デボラ[ブラム,デボラ][Blum,Deborah]
ウィスコンシン大学マディソン校科学ジャーナリズム論教授。サイエンスライターとして活躍。1992年には『The Monkey Wars』(邦題『なぜサルを殺すのか』白揚社)でピュリッツァー賞受賞
鈴木恵[スズキメグミ]
1959年長野県生まれ。早稲田大学文学部卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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absinthe
177
占星術と天文学が離別し、錬金術と化学も離別して、今まさに心霊学と心理学までが別れようとしている19世紀後半。奇妙な現象について真剣に考える科学者たちがいた。登場する科学者たちを、本書は断罪しない。科学者が研究を始めうようとする科学者たちに群がってくるインチキ霊媒者たち。困難な状況下で科学者たちは何を見たのか。幽霊はいないと断言する学者、いるはずだと断言する学者、科学的に究明しなければわからないとする学者が入り乱れる。・・・期待していたほど面白くなかったかな。それぞれの事実の現代科学による解釈が欲しかった。2019/05/13
hit4papa
61
ダーウィンが進化論を世に問うてから先鋭化した科学と宗教の対立。本書は、、科学がいちじるしい進歩を遂げていく19世紀から20世紀初頭の英米を舞台に、自明のものを超越した存在を研究しようとする科学者たちの生きざまを著わすものです。登場人物は、当代一流の物理学者、心理学者、哲学者、数学者たち。その精神の真髄は、物理法則至上主義の科学が偏狭さに陥っていることの愚を反省し、超常現象を科学で解明することで、科学と信仰の架け橋とならんとするところにあります。科学に対する真摯な姿勢が強く印象に残るノン・フィクションです。2019/10/04
Koichiro Minematsu
54
ゴーストハンター等による25年にわたる実験と研究を筆者サイエンス・ライターが書いたもの。科学では証明できないもの、科学でも否定できないもの。心霊研究とはそういうもの。2022/08/18
キムチ
52
取り上げられているのは19C~20C初頭。筆者は科学ジャーナリズムを標榜するサイエンスライター。邦題がややもするとオカルチックなので損している感じ。百科全書的につづられているのは彼が結論めいたことを述べず当時の科学万能主義の酔いしれた科学者たちの慢心を揶揄する気持ちが有ったのかも。中世に於いて錬金術、占星術から今日の学問は発した。近世、心霊術に取り組んだのはノーベル物理学・生理学・医学賞を受けた人々も含むそうそうたるメンバー。末尾にある登場人物小事典を読み写真を眺めるだけでも愉しい。2019/04/15
蛸
13
この本に出てくるゴーストハンターズたちの心霊現象に対するスタンスはこうだ。「確かに『ある』とは言えないけれど、『ない』とも言い切れない」。未知の領域に飛び込む彼らの勇敢さ(それが学問の今に繋がらない徒労だったとしても)に比べると不可知論を唱える科学者たちが何とも頑迷に見えてくる。一九世紀の心霊主義ブームの背景は、進化論などによって加速した機械的自然観と宗教の対立だった。心霊研究者たちは「今更宗教を信じることは出来ないけれどこの世界から意味が失われることに耐えられない」というタイプの人間だったのだと思う。2017/06/25