内容説明
父を平治の乱で失した源頼朝は、鎌倉幕府を開くまでに、叔父や従兄弟たちと骨肉の争いを続け、実弟の範頼、義経までをも死に追いやる。血に塗れた源氏の棟梁たる地位は、頼朝だけでなく頼家、実朝と、次代にもその血を求めた。鎌倉時代を描いて当代随一の著者による源氏四代に亘る血のつながりを綴る傑作歴史小説短編集。
著者等紹介
高橋直樹[タカハシナオキ]
1960年、東京都生まれ。92年に「尼子悲話」(『闇の松明』に収録)でオール讀物新人賞を受賞。97年に『鎌倉擾乱』で中山義秀文学賞を受賞するなど、本格的な歴史作家として活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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エドワード
21
最初と最後が、鶴岡八幡宮で源実朝が公暁に殺される場面。繰り返し読んでいる、鎌倉幕府最大の悲劇だ。源頼家の遺児・禅暁、源義経、藤原泰衡、源実朝、四人の物語を通じて浮かび上がる、あまりに大きな存在であった源頼朝の生涯とその思考。「武士が敗れた時は死ぬ時だ。」「武士の本分は敵討ちだ。」これは呪縛だ。武士政権のこのような根本精神では、平和な世の中が築けるわけがない。頼朝と義経、北条氏と比企氏、義時と実朝、共に戦った者同士が敵対して戦う殺伐の都、鎌倉。終章の、源氏の血筋を残すべく苦闘する源実朝の深い孤独が心に響く。2019/05/08
鯖
20
短編四つとは思えないほど濃かった…。河内源氏蠱毒壺から逃れるには、片眼を潰すくらいの覚悟がなければ無理なのね。赤ちゃん実朝が和田義盛に抱っこされて漏らしちゃったと、爺になった和田義盛が繰り返し回想するシーンには先日和田塚に手を合わせてきたばかりだったこともあって、胸が痛くなった。鎌倉時代ってホント悼ましい時代だと思います。だがそこが好きなのだった。2015/04/11
紅花
7
題名のごとく「頼朝」は霊鬼で、4つの短編の中に主人公としては出てこないのに、いつも背後に頼朝の恐ろしい陰がつきまとう。私として貞暁が一番面白く、恐ろしかった。また実朝がただ弱腰の将軍と方付けず、血で血を洗い、呪われた将軍家の進路を変更しようとした将軍としての生き様が新鮮だったし、こっちの方が納得出来る所もあった。始めての高橋直樹、濃い内容に最初は戸惑いながら、終わってみれば新たな価値観が生まれて面白かった。2014/05/23
ぴろ
3
源氏の血をテーマに書かれた中〜短編集。大河ドラマ平清盛好きだった自分はかなり楽しめた。「源太の産衣」では新しい実朝像を描いてくれて嬉しかった。ただやや淡々としていて、文章も硬質かなと感じた。2016/04/06
Y...
2
貞暁(源頼朝の側室の子)、平時忠、藤原泰衡、源実朝と源氏の血をテーマに書かれた4つの短編集。最後の「源太の産衣」は実朝が源氏の血統が途絶えることを憂いた話が良かったです。2024/01/05