出版社内容情報
突如スナックに闖入してきた豚の厄を払うため正吉と三人の女は島に向かった。芥川賞受賞の表題作と「背中の夾竹桃」を収録する
内容説明
ある日、突然浦添のスナックに豚が闖入してきた。豚がもたらした厄を落とすため正吉(しょうきち)と三人の女たちは真謝島に向かう。ひたむきに生き、ときにユーモラスな沖縄の人々の素朴な生活を生き生きと描き、選考委員の圧倒的支持を得て第114回芥川賞を受賞した表題作。ほか一篇「背中の夾竹桃」を併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
272
1995年下半期芥川賞受賞作。豚がスナック「月の浜」に闖入したことによって、そこで働く女たち3人は、主人公の正吉と真謝島に向うことになる。いわば厄落としのためである。池上永一なら、ここからファンタジックに物語が展開して行くのだが、又吉はあくまでもシリアスである。沖縄に独特の御嶽は、ここでも重要な役割を果たしているし、全編が沖縄の濃密な風土の中にある。ただし、その「語り」はあくまでも共通語だ。「何か馬鹿馬鹿しいけど必死に生きている」3人の女たちが哀れでもありながら、そこに強烈なリアリティが浮き上がってくる。2013/06/20
遥かなる想い
168
第114回(平成7年度下半期) 芥川賞受賞。 大学生の正吉が、豚の闖入の厄を 落とすために、スナックの女3人と 真謝島に行く様を描く。 底抜けに明るいのは、沖縄に 生きる人々の力なのだろうか。 積もりきった罪を払うという 発想は民話に基づくものなのか。 正吉の眼を通して、必死に明るく 生きようとする沖縄の女性たちを 軽やかに描く…そんな話だった。2014/07/19
kaizen@名古屋de朝活読書会
113
芥川賞】沖縄を意識する小説。ユタ(霊能者)マブイ(魂)ウタキ(御嶽)にウガン(御願)。真謝島へ。発端の豚に始まり、沖縄を満喫。沖縄で再読したい。2014/06/23
hit4papa
62
タイトル作は、豚の厄祓いのために聖なる島を訪れた三人のホステスと、彼女らを先導する大学生の数日を描いた作品。舞台は風葬が行われている架空の島。店に闖入してきた豚が災厄の象徴とするのも、ホントなのか判然としませんが、聖と俗の混淆がうまく著されています。旅行気分の女子たちとユタもどき男子は、またまた豚のためにトラブルに見舞われるという展開。下世話なシーンが続くものの、ラストは神さまのいる島らしい気分に浸れます。「背中の夾竹桃」は、沖縄を舞台としたハーフの美しい女性と米軍兵士の恋愛小説。湿度が低いのが良い。2023/03/29
yumiha
50
スナック「月の浜」に侵入した豚の厄災を逃れるために真謝島の御嶽(ウタキ)へ向かった正吉とスナックのママとホステス2人。まだ学生の正吉の繊細さと比べて、3人の女たちのたくましいこと。よく吞みよく食べよく喋り、学生の正吉には驚くような過去を持ち、悩み、生き抜いてきた。このしたたかな3人に真謝島の民宿のおかみまで加わるから、ハチャメチャなやりとりが楽しい。もう1篇の「背中の夾竹桃」はアメリカ軍人だった父を持つミチコが、ベトナム出動を目前に控えたGIジャッキーとの落ち着かない日々を描く。2023/12/12
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