出版社内容情報
いまなお日本人の精神的象徴として聳立する和魂洋才の人、鴎外。近代日本の黎明をかざる文豪の名作集。「現代日本文学館」その三
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ねこさん
27
『阿部一族』では、他者が実際ほとんど生理的な存在であるように思えてくる。聡明な主君が、狭量な分別で人間関係を弄くり回すような者を重用し、一方で実直な家臣へ理由のない嫌悪を向ける。好悪の儘ならなさが、人を不幸にする悲哀。感情に潜在する構造が自明でないものを自明であるかのように思い込ませ、不可避な個として他者に関与し、自覚なき加害を連鎖させる。ここにも三島の『豊饒の海』のような種子薫習の絡み合う世界があり、温かい血のリアリティと生の意義、逆説的に立ち上がる存在の無意味さが増幅させられて独特の感慨を残している。2020/03/12
かみしの
5
鴎外の代表作を収録した作品集。「妄想」「雁」「山椒大夫」「護持院原の敵討」「魚玄機」「都甲太兵衛」は初めて読みましたが、特に始めの3つが印象的でした。「妄想」の思想的で硬質な文章は格好いい。死に関する件は僕も似たようなことを思っていたので、すごく共感しました。「雁」は生活感がある恋愛小説。お玉可愛い。語り口や趣向に、江戸文学の影響が感じられます。少女漫画チックな前期の作品もいいけど、こちらの方がすっきりとしていて好みかもしれません。『はてしない物語』を彷彿とさせる「それは別の物語」にはやきもきします。2013/01/31
ぷるいち
2
個人的にはやはり「高瀬舟」が感慨深い。非常に厳密に定められた設定とその中で非常に鋭く切り込まれる主題。その主題の鋭さ自体が、まさに突きつけられる剃刀のようである。 解説のあまりに紋切型な若者世代の読書批判には腹が立ったが、それを抜いてもこのシリーズは上手くまとまっていると感じる。 「ヰタ・セクスアリス」があればまさにベスト盤といった感があるように思う。2012/07/21
neugierde
1
『舞姫』『雁』『高瀬舟』『山椒大夫』が好き。2016/11/07