内容説明
彼の人は、その治世のはじめから危所に足を踏み入れた。一九二六年十二月二十五日、二十五歳の若さで玉座についた裕仁。金融恐慌、張作霖事件、浜口首相狙撃、血盟団事件…。日本経済が破綻への道を進み、血なまぐさい事件が頻発する。若き天皇は、田中義一総理をはじめ多くの家臣との対立を経験しつつ、新時代の幕を開く。
目次
昭和の幕開け
金融恐慌
政治への批判
女官制度の改革
張作霖爆殺事件
神ながらの道
総理への問責
皇嗣なき天皇
懊悩の日々
浜口雄幸狙撃
三月事件
満州事変
十月事件
血盟団事件
著者等紹介
福田和也[フクダカズヤ]
1960年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。現在、慶應義塾大学教授。文芸評論家として文壇、論壇で活躍中。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子文学賞、2002年『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雨猫
6
いよいよ1番興味のある昭和の幕開け。不況で閉塞感がある中で次々と大事件が起こる。日本全体に怨嗟が渦巻いているよう。非常に興味のある内容で面白いのだが、話が前後したりと自分の勉強不足のせいもあるが多少読みにくいところも。☆4つ2015/02/05
Akira Kumoi
5
年号暗記と数行の解説レベルで覚えていた満州事変が、その後の日本にきわめて大きな影響を与えたという事実にあらためて震えます。 もうひとりの吉田茂のことは知りませんでした。 “吉田茂といっても外交官で、牧野の女婿である吉田茂ではない。 内務省にこの人ありと云われていた「目白の吉田」である。外交官の吉田茂が「大磯の吉田」と呼ばれるようになったのは第二次大戦後のことだ。この時期、官界、政界で「吉田」といえば内務省の吉田に決まっていた。”2017/11/03
あらあらら
4
天皇とはいえまだ20代。政党間の駆け引き、軍部の暴走、外交、暗殺、厳しい時代における苦悩は計り知れない。2022/02/20
長野秀一郎
4
福田和也の現時点におけるライフワークと言って良い長編の第3巻。小説のように台詞が出てくるなど純粋な歴史書とは言い難いのかもしれないが、逆にこの時代の人物たちが活写されていてリーダビリティは高い。本書でようやく昭和天皇即位後に達したが、若い天皇(25歳である)の苦悩を軸に昭和初期の政治的情景がありありと浮かぶ。個人的に印象に残ったのは皇太后(大正天皇妃)の誠実さと筧の思想、そして昭和維新の萌芽である。評価52017/02/06
ひこまる
4
満州事変勃発にあたる柳条湖事件の項を読み終わったのが81年前とほぼ同じ日付の9/18。尖閣諸島問題で反日デモが続いている中国ではこの日以降も更に激化するのだろうが、八方塞がりの状況にそれに対応できるだけの人材がいない現状が(大言壮語する小物は数知れず)当時と現在でよく似ていることに恐れを感じる。一人でも多くの国民が昭和史から学ぶことが重要だと思う。2012/09/18