出版社内容情報
この道一筋と心に決めても、惚れた男の面影が心をよぎる。恋に仕事にひたむきに生きる江戸の女たちを描いて直木賞に輝いた傑作集
内容説明
新進気鋭の女流絵師・歌川芳花ことおいちは、出世作『竹林七美人図』で彫師をつとめた才次郎と恋におちる。一途に才次郎を求めるおいちだが、才次郎には女房と子供が待つ家があった…。表題作ほか、江戸の町で恋と仕事に生きた“キャリアウーマン”たちの哀歓を描いて直木賞に輝いた珠玉の連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
137
【直木賞】江戸物短編連作集。「恋忘れ草」版下絵を描くおいち。家族を取るか、仕事を取るか。一人暮らしになった寂しさが残る。他のどの話も、仕事、家族が題材。著者の考え方、感じ方はなんとなく分かってくるが、楽しくはない。2014/03/26
遥かなる想い
123
第109回直木賞(平成5年/1993年上期)。 著者によると、江戸の キャリアウーマンを 描いた短編集らしい。 男尊女卑の江戸時代後期、 女が仕事を持って自立するとは どういうことなのか。恋も 平凡な幸せも捨て、生き抜く 女性たちへの応援歌であり、 それは現代に生きる同じ立場の 女性たちへの応援歌でもある。 登場する女性たちがいずれも 凛として気持ちがよい。 何かを犠牲にしながら、それでも 生き抜く、底に流れる哀歓の ようなものが軸になって、優しく 短編集を繋いでいる。2013/09/29
じいじ
99
6つの連作集。江戸を舞台に、仕事に情熱を燃やす6人の女たち。著者の北原さんは、受賞の記者会見で「江戸のキャリアウーマンを書きたかった」と述べています。老舗の小間物問屋を仕切る娘主人、寄席の高座にあがる娘浄瑠璃師…など。私は、題名も粋でお洒落な【恋忘れ草】がいいですねぇ。武者絵で人気を博した歌川国芳を師匠に仰ぐ女絵師おいちの話。不愛想だがめっぽう腕が立つ彫師の男に惚れるも、振られてしまう。或る日、おいちに大きな仕事が舞い込む…。仕事と妻子ある男への未練の狭間で揺れ動く女ごころが愛しい。【直木賞受賞作】2020/01/29
hit4papa
71
江戸時代(天保三年頃)の、職業婦人、現代で言うところのキャリアウーマンが主役の短編集です。それぞれの作品に、他の作品の登場人物がちらりと顔を出したりと、連作短編の趣きもあります。 本作品集は、仕事に恋に生きる女性たちの逞しさが、活き活きと描かれています。時代小説であると、ちょっと距離を置きたくなる読者もいるでしょうが、本作品集の登場人物たちの価値観は、今の女性たちのそれと変わることがないので、読み進めながら彼女たちと一緒に落ち込んだり、ハッピーな気分を味わったりすることでしょう。【直木賞】2020/01/14
えむ女
38
江戸のキャリアウーマンを描いた6編の連作、手習師匠、筆耕、浄瑠璃、絵師、簪の意匠、料理屋のおかみなど、恋も不倫も金の算段もありながら仕事に対する情熱を忘れられない。北原さん独特の逡巡する心の声が少なかったように思うけど、意志の強い女たちが良い。こんなふうに生きていける女性ってどのくらいいたんだろうか。2023/06/16