文春文庫
草すべり その他の短篇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 251p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167545185
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

40年ぶりの再会。眩しかった彼女と浅間山へ──清冽にしてせつない珠玉の4篇。泉鏡花賞・芸術選奨文科大臣賞をW受賞した話題作。

内容説明

高校の同級生だった女性から手紙が届き、四十年ぶりに再会して登った浅間山での一日。青春の輝きに満ちていた彼女だったが…。人生の復路に始めた山歩きだからこそ知るかけがえのないものとは。過ぎゆく時のいとおしさが稜線を渡る風とともに身の内を吹きぬける山歩き短篇集。各賞で絶賛された珠玉の四篇収録。

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
1951年、群馬県に生れる。現在、長野県佐久市に住み、総合病院に内科医として勤めつつ、地道な創作活動を続けている。81年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。同地で「破水」の第53回文學界新人賞受賞を知る。89年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞。「草すべり その他の短篇」で、2008年、第36回泉鏡花文学賞を、翌09年、第59回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

272
いずれもしっとりとした味わいの、しかも思索的な4つの短篇を収録。物語の語り手(作者とほぼ等身大だと思われるが、あくまでも仮構)は、かつて経験した強度の鬱からは解放され、職場に復帰するのだが、その時には自己を取り巻く世界も、そして自分自身もまた以前と同じではなかった。知り合いの多くが鬼籍に入り、自分も50代の半ばを迎えていたのである。山に向かうことで一歩一歩踏みしめるように生を体感し、そこで出会った人たちとひと時の交わりを持つのだが、語り手は(そして人間は)本質的には孤独に生きるしかないことを知るのである。2015/03/27

goro@80.7

45
この山の景色に立たせたかった人を想い紡がれた「草すべり」が切ない。好きだった同級生は今どうしてるでしょうか。元気でいてくれれば良いなと思わずにはいられない。山をめぐる4つの短編集。人生の下山に山への登山は体と心にには良いのかもしれない。「穂高山」で出逢う国語教師の達観とおろおろ降りる「私」がお気に入り。しかし文章のどこにも「私」の記述はないので「自分」なのかもね。2016/10/31

ベイマックス

40
かなり久しぶりの南木佳士作品。以前は面白く、何冊か続けて読んだけど、今作は、いまいちだった。エッセー風なのと、登山が話の中心で、興味のない対象だからかも。2020/02/18

メタボン

34
☆☆☆★ 泉鏡花文学賞っぽい作風ではないが、滋味あふれる短編集でじんわりとした感傷に浸った。作中に出てくる言葉だがまさしく「ぬくだまる」感覚。浅間山、妙義山、穂高といった信州近辺の山を舞台として、患者の死を見つめ続け心に病を持った医師が「生きていること」の感覚を確かな感触で伝えてくる。2018/04/17

翔亀

33
南木さん5作目は、途中を飛ばして一気に最近の作。常に作家の体験に根ざす小説の主人公は定年間際となり、山登りに夢中になる。山岳ものに転換したわけではなく、今は亡き同僚医師、肉親、うつ病などの回想と山の風景が交錯する。一編一編が違う主人公のはずが、益々エッセイともつかぬ含蓄のある語りになってくる。通底するのは「生き延びるとは、必ずだれかしらの犠牲をともなうものなのだ」という、五十を半ば過ぎて恩師/先輩/親を失って思い至る人生の境地。私ももうすぐそのような境地に達するのだろうか。無性に山に行きたくなる。■952014/05/26

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