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文春文庫
冬物語

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  • サイズ 文庫判/ページ数 241p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167545062
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

冬になるとワカサギ釣りに熱中していた時期があった。シーズンが始まったばかりの頃、氷が割れて湖に落ちかけたことがある。それを救ってくれたのが、釣り名人の園田かよさんだった―。表題作の「冬物語」をはじめ、人生の喜びと悲しみを温かな視線で切りとって見せた、珠玉の短篇12篇をおさめる。

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
昭和26(1951)年、群馬県に生れる。秋田大学医学部卒業。現在、長野県南佐久郡臼田町に住み、佐久総合病院に勤務。そのかたわら、地道な創作活動を続けている。56年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。同地で「破水」の第53回文学界新人賞受賞を知る。平成元年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

397
表題作を含む12の掌編からなる小説集。タイトルに魅かれて積読本から選び出したのだが、必ずしも冬を描いたものではない。南木佳士の小説は、けっして熱狂的にという訳ではないが、それでも地味に愛好しており、散発的ながらもこれで16冊目になる。南木の作品には私のような読者が多いのではないかという気がする。さて、本書は南木の中年期に書かれているのだが、後年のものと比べるとまだまだ若い。それでも医者としての転換点にはさしかかっているようで、随所にそうした感じが現れている。そして、彼の見る人々の姿はやはり切ない。2019/11/21

新地学@児童書病発動中

117
医師として働きながら小説を書き続けている作者の12の短編。比較的短い話が多いのだが、生と死を正面から見つめて凝縮した内容を持つものが多く、まるで12冊の長編を読み切った満足感を味わえる。後書きに「死がありふれた出来事になってしまった」とあるが、絶えず人の死と向き合うことは並大抵のことではないだろう。書くことで気持ちを浄化したいと言う作者の想いを感じながら読んだ。読者も死は無意味ではないと言う救いを得ることができる。こういった作品は繰り返し読むことで、輝きが増すのではないかと思った。2015/05/30

kaoru

65
誠実に人生を歩む過程でパニック障害を患った医師。その当人が描く短編はどれも地味だが鈍い光を放っている。ワカサギ釣りに夢中で水に落ちた主人公を救ってくれた老婆の夫を看取る『冬物語』、カオイダンの難民医療を描いた『タオルと銃弾』、貧乏な医学生と文学好きなお茶屋の主人の交流を描く『急須』、安楽死を問う『木肌に触れて』などどれも心に響く。死と生を絶えず見つめる医師という仕事が否応なく文学に作者を向かわせたのかもしれないが、精神の安定を保つためのワカサギ釣りや美しい自然描写、何気ない家族の情景などに思わず和む。2021/01/14

キムチ

58
再読。南木さんの目に映る心象風景に薬効を感じる文が続く。時に思い出し、触れたくなる筆者の文意の奥に流れる水辺・・信州を山に行く時しか訪れることが無かったものの、医療空間の匂いがそこはかとなく心にしゅむ。心の温度が低くなってくると運命を受容することの意義。その時へのカウントダウン、そして末期に目に映る情景を意識をもって眺められるのだろうか・・なんてウェットな気分になってしまった。みのさんの訃報を聞き「あんなにパワフルだった人も。。」と思ったのも一因かな。2011/08/06

名古屋ケムンパス

52
幾人もの末期肺癌患者を見送った医師の物語です。自らも鬱を発症し、年老いた実の父は寝たきりになってしまっています。でも、不思議と絶望のみに沈み込むのでなく、何処かしらじんわりとした温かみを感じさせる「生と死」を見つめた短編集として綴られています。主人公が回り道をしながらも医師として生を繋いでこられたのは、澄んだ冬をもつ故郷長野の佐久地方に素朴に暮らす人たちの優しさや親しみのおかげなんでしょう。心に染み入る味わい深い文学作品として堪能することができます。2017/02/14

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