出版社内容情報
繁栄ニッポンの貧困とは、いまどうなっているのか?ケースワーカーたちの悩み、怒り、喜びを通して、生活保護の実態に肉迫する
内容説明
政府の締めつけとマスコミによる福祉たたきの狭間で、貧困層と直接向き合ってきたケースワーカーたち。福祉事務所で働く彼らの悩み、怒り、喜びを通して、過剰な期待と誤解を受けてきた生活保護制度の実情を明らかにする。未曾有の発展をとげた戦後日本の「見えない貧困」を描き出した衝撃のルポルタージュ。
目次
第1部 東京・K福祉事務所
第2部 なぜ母さんは死んだのか?―札幌母親餓死事件の真相
第3部 忘れられた故郷―筑豊の町から
第4部 ケースワークという希望に向けて
1 ~ 1件/全1件
- 評価
あむーる堂の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
50
1999年刊。市役所で生活保護に従事するケースワーカーに焦点。1987年に札幌市で母子家庭の母親が餓死した事件に一章。国の保護費引き締めの施策に母親は巻き込まれたとして当時注目を集めましたが、著者は母親の周辺の人間関係と関係者の不自然な言動にあえて踏み込んで、市民の言い分を鵜呑みにして行政を悪者として断罪することに果たして意味があるのか懐疑的な見方を示します。 同事件を母親寄りの立場で著した水島宏明『母さんが死んだ』と主張は対照的。同じ事象であっても立場や切り口でものの見え方が異なることを学べる一冊です。2020/05/05
kinoko
11
4.5 札幌母子餓死事件の真相が衝撃的だった。マスコミは何かと行政を悪者にしたがるがそれが真実でなかった場合は真摯に謝罪するべき。これを出版するのはかなり勇気がいったのでは。本当に興味深くいろいろと考えさせられる良書。2012/11/18
takizawa
11
不正受給問題に挑むにはいつ撃たれるかもしれないという覚悟が必要だった(でもどうやって職員の自宅を突き止めるんだろう)。ケースワーカーの努力なしに生活保護行政は成り立たない。ケースワーカーはもっと評価されるべき。遊びたい盛りの新人公務員がアル中患者(複数)と毎日面談するエピソードが牧歌的で和む。2012/06/10
マギカ鍋
10
生活保護制度の執行官である福祉事務所のケースワーカー。個々のケースは安易に非難する話でなく複雑かつ深刻。ケースワーカー達は「無差別平等の保護」の理想と現実に葛藤しながら受給者との信頼を地道に築き真摯に取り組んでいる。ただ貧困の実態の複雑さは理解が困難である為、一面的にしか報道しないマスコミによる世間の非難等に翻弄され現場は混乱させられる。格差の広がり、財政困難、超高齢化社会、いつ何が起こるかわからない「無縁社会」の中で生活保護制度の重要性は増すだろうが、この実態を知らなければ様々な問題の解決はないだろう。2012/09/07
樹里
9
福祉事務所で働くケースワーカーの人たちから見た生活保護受給者の話。まず、市役所に勤めてる人が移動でこの仕事につくということがあることを知りませんでした。本当に大変な仕事だと思います。ほとんどの人が3年くらいで移動して行く中、この仕事にやりがいを見つける人もいるようです。受給者の人たちにも色々な事情が重なり、その状況から抜け出すのが簡単ではないんだなと思いました。2017/07/31