出版社内容情報
與謝野晶子と有島武郎。二人の間に何があったのか。歌の新解釈と新資料を駆使して二人の魂の消長を辿ったノンフィクション問題作
内容説明
与謝野晶子と有島武郎。鉄幹の胸に飛びこみ情熱の歌を詠む晶子の心に次第に兆すうつろな気持。いっぽう有島武郎は妻を亡くし文学的ゆき詰まりの中で悩む。その二人が出逢う。心の動きを秘めつつも二人の間にかかる“夢のかけ橋”。詠まれた歌を丹念に解釈し、資料を駆使して日本近代文学史に一石を投じた問題作。
目次
序紫
第1章 情死(事件;落花;魔性;同行二人;非難)
第2章 官能(青春;『或る女』;背教)
第3章 紅蓮(直情;星の子;光茫)
第4章 寂寥(恋ざめ;変身;空洞)
第5章 思慕(昴揚;火を放つ;恋の符牒;“夢”)
第6章 秘事(地獄;破局;六番町の使い)
有島武郎・与謝野晶子略年譜
有島武郎・与謝野晶子略系図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
冬見
17
「君を見に通ふ橋をば作らんと思ひ立つ時さめし夢かな」ひどく切ない気持ちになった。同じ年に生まれ、のちに互いの文学に惹かれ、心交を持った二人。踏み込めず、追いかけず、すれ違いに終わった儚い逢瀬。「ゆめを見ることの少ない私が今朝あなたの夢をみました」から始まる手紙の美しさに息を潜める。こんな手紙、大切な人にしか宛てられない。もし、この人と恋に落ちていたのなら、と考えずにはいられない。「書かぬ文字言はぬ言葉も相知れどいかがすべきぞ住む世隔たる」2018/01/31
PIYOBLACK
2
映画華の乱を観て、興味を持ちました。両者の間の恋だけでなく、それまでの恋愛観とか少しわかった気がする。公にできない2人の間で交わされる夢(恋)に何度もロマンを感じる。 最初は鉄幹は酷い奴だと思っていたけど、落ち込む晶子に寄り添う様子を見て、見直した。記念館だったかで知ったが、晶子が品格を大切にしていた様子などわかってきたように思う。読む前から好きだった、住む世隔たると人怪しまむ等の作成経緯や思いがわかったのもよかった。2023/05/16