出版社内容情報
ナチスドイツの「ユダヤ人虐殺」と日本の「戦争犯罪」を同一視する無知に立脚した「戦後補償」論の欺瞞と誤謬を冷徹に解き明かす
内容説明
本書は、慰安婦問題、教科書問題の議論の出発点ともなり、また巷間流布している「戦後補償はドイツに見習え」という無知に基づく一部報道の過ちを検証し、日本人の戦争責任論の誤謬を鋭く解明している。単行本刊行後の内外のマスコミの戦争責任論の変遷等をカバーした書き下ろし新稿を加えた決定版。
目次
第1章 異なる戦争 異なる悲劇―ドイツの知らなかった日米戦争の背景
第2章 ヴァイツゼッカー前ドイツ大統領謝罪演説の欺瞞―ドイツ人の罪の償いは可能か
第3章 歴史とのつき合い方―英米からみた日本の謝罪問題
第4章 戦略なき「国際貢献」を排す―コール氏のしたたかさに学ぶ
第5章 冷戦後の「戦争と平和」考―軍事ノイローゼ克服の日独の差
第6章 ギュンター・グラスと大江健三郎の錯覚―「文学と政治」を再考する
第7章 学生気質の変貌―広がりすぎた自由の悲劇
第8章 「統一ドイツ」の行方―われわれが初めて出合ったドイツの悪意
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
29
独文が専門の著者が94年に記された評論8篇。ドイツの行った戦争は侵略戦争であり、ユダヤ人虐殺は通常の戦争犯罪ではない。当時、マスコミがアジア諸国への補償で取り上げられた“ドイツを見習え”論調に喝。戦争犯罪と平和に対する罪が問われた東京裁判。ニュルンベルクでは人道に対する罪も。ドイツは戦争犯罪に関して国家賠償はしていない。東京裁判で訴因とならなかった「人道に対する罪、ナチス関連」のみ補償をしていると。2020/03/29
ひさしぶり
22
◯旧西ドイツはこれまで国家賠償も戦争犯罪に対する戦後責任もはたしてこなかつた。旧交戦国と講和条約を結んでいない。西ドイツ基本法139条:ドイツ国民はナチズムから「解放」された、という見地に立ってナチズムとドイツ国民はとの同一視は避けられている。ナチズムとは別だから道徳責任は負わないが貿易立国として生きて行くために政治的責任(お金による償い)を負う◯ドイツの抱える問題:難民問題、財政問題(東ドイツの産業活性化に問題意識がないのが深刻&底なしの支援)、秘密警察(国民を無気力化にした。 つづき2025/05/30
ムカルナス
4
第一、二章は日独の違いの説明。日本は戦勝国も行った通常の戦争犯罪を行った国家でドイツは戦争とは別に特定の人種を管理的に大量虐殺した犯罪国家である。よって日本は講和条約を締結し国家として罪を認め国家賠償を行い国民の団結のためにも特定の戦争犯罪人を追及しなかった。ドイツは自らを犯罪民族としないために特定の個人の犯罪だとし魔女狩りのように犯罪人を糾弾した。日本の世界を見る眼が単眼的だとの指摘も興味深い。国内の視点をそのまま世界に延長すると世界史のなかでの日本の史実の位置を見誤りバランスを欠いたものになると思う。2015/08/09
Hiroshi Higashino
1
日本について論じた本で、ドイツを対比・鏡として取り上げている. ドイツに見習えとか言いたがる人は、一読いただいた方がいいでしょう.2019/09/16