出版社内容情報
光を失いつつ美濃屋の主として忙しい日々をおくる信太郎と、その身を案じるおぬい。ある日、江戸を大きな揺れが襲う。感動の傑作。
内容説明
火事の怪我で視力を失った呉服太物店「美濃屋」の主・信太郎と、その身を案じるおぬい。眼も回復しないまま、美濃屋では手代頭の助四郎が店を飛び出し、別家・菱屋とも義絶するなど揉め事が続く。そんなある日、江戸を大きな揺れが襲う―。崩れゆく町と揺るがぬ家族を描く、静かな迫力に満ちた好評シリーズ。
著者等紹介
杉本章子[スギモトアキコ]
昭和28(1953)年、福岡県に生れる。54年、「男の軌跡」で第4回歴史文学賞佳作入賞。平成元年、『東京新大橋雨中図』で第100回直木賞を受賞。綿密な時代考証に基づいた作品に定評があり、「信太郎人情始末帖」シリーズ第1作「おすず」で平成14年度中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
48
引手茶屋千歳屋を番頭彦作夫婦に譲り、息子千代太を信太郎の義兄の店に奉公させ、おぬいは赤ん坊のおみちを抱いて美濃屋の女中となって信太郎の前に現れる。そのころ、美濃屋から暖簾分けした菱屋の掟破りの商法に苛立つ信太郎だったが、ある日突然失明した目に光が戻ってくる。そんなとき安政江戸大地震が襲う。このシリーズを彩ってきた人たちの“その日”を追う表題作が面白かった。なかでも家屋に押しつぶされた千歳屋のお㔟に寄り添って彦作がともに死を迎える場面には泣けた。2025/05/16
ドナルド@灯れ松明の火
18
信太郎シリーズ。その日とは何かと思っていたら安政の地震だった。菱屋の裏切りが判明し暖簾解き放ちにより縁を切り、助四郎も暇乞いをして去っていく。これで信太郎の周りはしっかりと地固めができたともいえる。残るは美濃屋に未だ口を出すおふじだけが気がかりである。失明も癒え喜びに溢れる美濃屋だったが「その日」がやってきた。いよいよ最終巻を残すのみだが、杉本さんの筆致はしっかりと時を描き、信太郎を巡る人々の心情を余すところなく描き切っている。お薦め2016/05/12
タツ フカガワ
11
不治と思われた信太郎に視力が戻ってくる。そして姑おさだとおぬいとの間に変化が見えてきた「その日」、江戸を安政の大地震が襲う。前作同様、涙腺を刺激するシリーズ6作目ですが、なかでもおぬいから千歳屋を引き継いだ彦作とお勢の最期のシーンは泣けました。2019/09/16
sai
4
視力を失いながらも懸命に店と家族のために踏んばる信太郎、おぬい・母・姉以外の問題を除き、困難に直面しても冷静に対処する采配や言葉遣いは、大店の旦那としての風格が備わり頼もしくなってきた。安政の大地震のドキュメントのような「その日」から、信太郎を核として美濃屋の格を見せる「千代結び」への展開は見事!2014/09/11
あいちょ。
3
図書館。 信太郎6作目。 ・越後からきた男 ・別家召し放ち状 ・五月の空の下 ・凪の日 ・その日 ・千代結び 2024/03/19