出版社内容情報
北九州の軍国少年たちは激動の終戦時をいかに生きたか……。時代の重圧に黙々と耐える彼らを的確端正な文体で描書し第74回芥川賞を受賞した表題作など五篇を収録
内容説明
終戦の年、北九州の地で国民学校の6年生だった主人公は、志賀島に海洋訓練に行き、軍隊の苛酷さの片鱗をかいま見る―激動の時代の流れにほんろうされるひよわい少年たちを描いて第74回芥川賞を受賞した表題作など5篇。戦中戦後の青春のひとつのかたちを見事に的確に描破した記念碑的な作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
107
【芥川賞】主人公の生き方と僧侶になった友人の生き方。敗戦間際の日常の一部を切り出して見せてくれている。ああそうなのか、と思うことと、へえそうなんだ、と思うことがある。生きている限り人間であり続けることを描写しているのかと。2014/03/21
たぬ
27
☆4 九大捕虜解剖事件の関係者を匿う話や溌溂としたキャリアウーマンだった母がメンヘラになってしまう話などテーマ自体は暗く重いものが多い。しかし淡々とした描写ゆえあまり大仰な表現はやや苦手な私との熱量バランスが釣り合っているようで気分が沈むことはまったくなかった。芥川賞受賞作を読んでみようシリーズを実行していなかったら一生知らずにいたであろう作家さん。かなり好みの文体で淡く嬉しい。2022/08/28
user
1
戦争、革命。静かな激動の時代。2010/01/06
ふみ林
0
戦中や戦後間もない時期を過ごした少年青年の、内省を書いた短編集、だと思います。文章が綺麗で非常に読みやすいのもありますが、時代の流れと重ね合わせながら"自我"をひたすら見つめ続ける各主人公の姿は、今の人達の心にも響くものがあると思います。この方の本は現在では絶版状態のものが多いみたいで、勿体ないなと思うくらい、これは良い本だったと思います。2023/05/16