出版社内容情報
アラブ、十字軍、トルコ。古代より諸民族が侵入し、そのたびに戦火が広がり王朝が代わった、豊饒なる大地をめぐる英雄たちの興亡
内容説明
文明の発祥地としての栄光を担う古代エジプトの話をまくらに、七世紀におけるアラブの征服を踏まえた上で、十世紀のカイロ建設から現代までナイル川のほとりにしるす千年の叙事詩。アラブ世界最大の都の発展の歴史を、各時代の国際関係と絡めながら、資料を博捜して人物中心に描く。これは、わが国で初めてのカイロ物語である。
目次
下町を歩く
オールド・カイロ
アラブの征服
首都の建設
中世のファラオ
ファラオの次はカリフが
ファーティマ朝の盛衰
カイロと十字軍
サラディンの時代
アイユーブ朝の君主たち〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
富士さん
1
再読。金髪に碧眼の君主や黒い肌に縮れ毛の君主、時に女性の君主も君臨し、イスラム、キリスト教諸派、ユダヤ教徒、アジア系、ヨーロッパ系、アフリカ系の人々が入り混じり、いろいろな文化や制度を持った国々が、武器を持ち、商品を持ち、書物を持って行き来した、地中海世界のハブであるエジプト。輝かしい古代文明に幻惑されて黙過されがちな、この地が持ち続けている魅力的な日常や異文化のどうしようもないすれ違いが本書では丁寧に描かれており、カイロというひとつの街の歴史から自然と魅力的な比較文化論へと続いていく名著だと思います。2016/04/19