出版社内容情報
指物職人、御家人、独り暮らしの妾、釣り好きの三人がそれぞれの身の上話、釣りの動機などを語り合う、味わい深い情感溢れる作品
内容説明
三日働いたら三日は釣りをする指物職人岩蔵、暇を持て余している無役の御家人金八郎、頭巾をかぶり屋形船で釣り場に現れる妾おさえ―無類の釣り好き三人が沖釣りで風に流されて木更津に漂着する。そこで初めて三人が釣りの動機、身の上話などを語り合う。表題作など、海にまつわる情感溢れる作品十篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
糜竺(びじく)
37
私の好きな直木賞作家の白石一郎氏の作品ですが、やはり外れ無しでした。非常に味わい深い熟成された話ばかりでした(短編10作品)!どれも良かったのですが、特に興味深かった作品は「十人義士」と「夕凪ぎ」です。「十人義士」の方は実話で、この作品は、人の噂や伝言などは、伝わっていく内に事実からねじ曲がっていって、最後にはとんでもない大騒動になってしまう滑稽さが描かれていました。「夕凪ぎ」の方は、事実は一つでも、人によって感じ方はこうも違うのかと、とても感じさせる作品でした。白石作品はホント深くていいです!2015/03/17
糜竺(びじく)
12
再読。2021/04/02
TheWho
11
海を題材にした歴史小説家が描く、時代短編物語。指物職人と無役の御家人そして大身旗本の妾の暇で釣り好き三人が織り成す情緒豊かな表題を皮切りに、島を逃亡した女の真実、赤穂義士討ち入りの1年前にあった長崎での十人義士の顛末、幕府御船方同心に婿入りした福岡藩士が見た幕府御船方の実態、諸藩江戸勤番の小身侍の実態、島から行方不明になった二人の顛末、長崎で抜荷と殺人に手を染め悪党になろうとした男の顛末、戦国期美作三沢城の攻防、厳島の戦いの顛末、志摩の海女の民話的伝承と十篇の物語。共に海にまつわる情感溢れる一冊です。2015/10/28
タツ フカガワ
9
全10話の短編集。なかで印象的だったのが「十人義士」と「勤番ざむらい」。前者は鍋島藩の家老と長崎町人の最高実力者である高木彦右衛門の中間が町で起こした些細な諍いが、やがて高木屋敷討ち入りへと発展した騒動を題材にしたもの。実際にあった事件で、赤穂義士討ち入りの1年前に起きたとか。「勤番~」は、九州から初めて江戸詰めでやって来た下級武士田岡市五郎の、ちょっと切ない江戸滞在記。2019/12/14
山内正
3
伯方島の沖合に小舟が漂う 島役人が伯方屋清二郎と廻船の軍次と分かり二日前釣りにと女房が 四五日しても帰らないから庄屋は代官に届けた 七年経ち江戸からの船の船頭が 江戸で清二郎に会ったと 庄屋は役人に江戸で話を聞いて来いと船に乗せた 兄貴の後釜で辛抱してたと 軍次は漬物石が頭に乗った気がしてたと島の夕凪の様な生活が嫌に 江戸で働く今がいい妻もいるしと 島に帰り庄屋に告げたら そんな事どこの家でもあると怒る 役人は試しに伯方屋へ行くと女房は客と話してた、軍次の家は 母親は寝たきりだと女房が話す 女二人元気だ2019/05/29