内容説明
イタリアのアッシジで、42年前に自分を捨てた母・美雪に身分を隠して再会した順哉は、帰国後、喫茶店のウェイトレス千菜がビルから飛び降りるのに遭遇する。自分と父を捨てて家を出た美雪の事情がしだいに明らかになる一方で、死んだはずの千菜から手紙が届くようになる―。謎が謎を呼び、ミステリアスに物語は展開する。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
昭和22(1947)年、兵庫県に生れる。追手門学院大学文学部卒業。52年、「泥の河」で第13回太宰治賞を、翌53年、「蛍川」で第78回芥川龍之介賞を受賞。さらに62年、「優駿」で第21回吉川英治文学賞を受ける
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感想・レビュー
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となりのトウシロウ
59
世良順哉は生まれて間もなく家を出た生母森末美雪に会うために夫婦で訪れていたイタリアのアッシジから足を伸ばし会いに行く。美雪は純哉の事は分からないようで、何も言わず別れる。帰国後、会社のビルから喫茶店の店員千菜が順哉の目の前で飛び降り自殺する。そしてその後、順哉宛に千菜から手紙が届くという少しミステリー要素のあるストーリー。実の母はなぜ幼い順哉を置いて出ていったのか?下巻に続く。2024/03/23
巨峰
42
出生直後に自分の元を去った産みの母。雛人形を隠し持つ実の父。彼の目の前で飛び降り自殺した喫茶店の店員から手紙が届く。ばらばらになりそうな要素をここまで纏めて読ませるのは凄いな。ミステリアスな展開の先がきになります。また、一気読みしそう。2015/09/10
June
25
42歳のサラリーマンの順哉は秘密でアパートの部屋を借りているが、家族と上手くいっていない訳ではない。自分を赤子の頃に捨てた母親に身分を隠して会いに行ったり、目の前で若い女が飛び降り自殺したり、エピソードが続く展開で飽きさせない。実の母は後に恵まれない子供のための施設を経営していたり、常務だった男が亡くなった部下の妻と焼鳥屋になっていたり、父が二十数年もあるものを隠し持っていたり。それぞれの人の生き様や生死がある。順哉が夢想するシーンが度々出てくるが、作者が何を表現したいのかはよく分からない。下巻へ。2017/09/04
エドワード
23
測量機メーカー勤務の世良順哉は、まだ赤ん坊だった四十二年前に実の母親が夫と離婚した過去を持つ。その母親・森末美雪は今、孤児を育てる「森末村」の理事長になっていた。アッシジで、北海道で、素性を隠して美雪と再会する順哉。世界狭しと駆け抜ける、宮本輝文学の旅の始まりだ。一方、順哉の事務所ビルで、喫茶店の少女が飛び降り自殺する。少女の名で順哉へ届く謎の手紙。家族に秘密で部屋を借りている順哉が、時折見せるエロティックな妄想-そこに度々少女が現れる。いつになく妖しく幻想的だ。二つのミステリーの行く末は?下巻へ続く。2019/06/17
くろすけ
15
再読。初読時はあまり感銘を受けなかった作品。今回はどうかな。主人公の同期の友人である今井さんが光ってるね。謎を追って下巻へ続く。2014/08/20