内容説明
エスタブリッシュメントの反撃は苛烈を極めた。裏切り、罠、謀略、ついに司直の手が伸びる。絶体絶命の龍を救えるのは、元名妓の右近のみ。かつていったんは闇に葬られた金融スキャンダルの鍵を握る女。「御前さま」と呼ばれる政界の黒幕が彼女を追う。マネーも権力も、恋もいただく。絢爛たる挑戦の行く末は…。
著者等紹介
辻原登[ツジハラノボル]
1945(昭和20)年和歌山県生まれ。90年「村の名前」で第103回芥川賞受賞。99年「翔べ麒麟」で第50回読売文学賞受賞。2000年「遊動亭円木」で第36回谷崎潤一郎賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
15
後半も一気に読んでしまいました。今現在ではあまり考えられないことですが、ひと昔ではこの中にあるような経済的事件のようなものが頻繁に起きていました。ただ辻原さんのいいのは単なる経済小説的ではなく情緒的な側面を入れ込んだり、古典の話やクラシックなども出てきたりして、知的満足感を与えてくれます。2014/07/26
黒豆
8
金融関係のやりとりも面白かったが、龍と綾の関係が良かった。欲を言えば金融の突っ込んだ話も期待したが。2015/10/27
鬼山とんぼ
5
金融恐慌時はアナリストで作品の舞台の近くにいた。当時はまだ大蔵省で、モデルも大体見当が付く。男女の話は川端康成や立原正秋の作品みたいで、愛情を持ちながらストレートに結びつくことのできない関係を耽美的に描こうとしたという印象。一方で金融市場は権謀術数渦巻くドライな世界。当局も含め殺伐でスピーディーな判断で埋め尽くされる。辻原さんはあえて本来相容れない同士を強引に接続させるチャレンジをしたわけだが、あの金融恐慌は戦後政治の闇も絡んでおり、それに強い義憤も感じて日経朝刊連載の場で剔抉したかったのではないかな。2024/08/26
tegi
2
20章には泣かされました…。ある男の死の瞬間を描く手さばきが美しくて美しくて。/壮大な物語のようでいて、気づいてみればある男が熱を出して再び起き上がる、というただそれだけのお話。その清々しさ!読むものもまた、熱を出して治ったあとのような軽やかな気だるさと快さに包まれる。/なおぼくは金融については門外漢ですが、謀略・諜報小説としての味わいは一級であること、保証いたします。2012/12/19
ヨシオ・ペンギン
2
ヘッジファンド、空売り、自己廃業やらなんやら。門外漢にはまったくわからない言葉がならんでいる。しかし、これだけはわかる、ドロドロしてんなー。お金のことやら女のことやら…現実で汚いと思うようなことをまじまじ見せつけられる。しかしそれでいてどこか乾いた印象もある。呉の思索。ところどころの引用、私はそんな中にこそ、この小説の醍醐味があるように思えた。株が全く分からないからかもしれないが。2011/07/07