内容説明
ウォール街で頂点を極めた凄腕のトレーダーが帰ってきた。天知龍、36歳。天涯孤独、暴走族あがり。12年ぶりに祖国に降り立った彼に早速誘いの手が―いっしょに日本を潰さないか。手始めに不良債権まみれの証券会社、そして巨大銀行、さらに…。戦後日本のエスタブリッシュメント(既成権力集団)に挑む世紀の闘いが始まる。
著者等紹介
辻原登[ツジハラノボル]
1945(昭和20)年和歌山県生まれ。90年「村の名前」で第103回芥川賞受賞。99年「翔べ麒麟」で第50回読売文学賞受賞。2000年「遊動亭円木」で第36回谷崎潤一郎賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
13
この作品は三度目です。日経新聞連載時とその後単行本とこの文庫です。バブルのころに書かれたので、その当時のことをあまり知らない人には好き嫌いが分かれるかもしれません。私は結構教養小説のような感じで読みました。この中に出てくる古典やクラシックを楽しんだものです。2014/07/24
鬼山とんぼ
4
金融危機当時は主人公とは年齢も含め近い世界で働いていた。平和相互事件や山一、長銀の破綻も近所の出来事。しかし事実関係は忠実に追っているが、肝心の主人公にもその他金融界の人物にも、大銀行大証券が潰れるかどうかの瀬戸際感、詐欺行為や市場で切った張ったのトレードをするハラハラ感、切迫感が描き切れておらず、金融小説としてのリアリティー不足が否めない。一方、作者の力点は大人の恋愛小説風の部分および風景、情景描写や衒学趣味の提示であることが見えてしまい(そっちは上手なんだけど)鼻白む思いがぬぐい切れなかった。 2024/07/28
黒豆
4
いきなりジャンボジェットのファーストクラスでの帰国に驚くが金融界のファンドマネージャーの世界に納得、登場する音楽や景色もいい感じ、秘密を抱えた人間関係が少しずつ明らかに、下巻へ2015/10/25
Jeanie
3
読みたかった同作家の別作品がなく、金融という文字を拾い、どうやらおやじ小説っぽいな、と思いながら選択。要は男たるや金と女(=芸者)!ってことか。なんだかなー、先週末からぐずぐずと面白い部分を探せなくて、時間の無駄だった。2012/02/15
tegi
2
「つまり、お互いがお互いの黒幕というわけです」。蘭村のこの表現に尽きる。むろん、誰の息子でもない主人公・龍が階段をのぼってゆくピカレスクロマンでもあり、と同時にみなが同じ高度でゆきかいもする――。/それにしても、この古びたかんじはなんだろう。今から15年前の物語、ということはわかるのだがしかし。既読であり著者の作品としてはより新しい『許されざる者』が見渡す地平に比べての小ささゆえのものか。2012/12/16