内容説明
「賢すぎる子供は油断がならない」宮仕えの第一夜に淑子を傷つけた一言。しかし藤原一門の有力者の係累として、時に兄に叔父にまもられながら、後宮の恋を生き、文徳帝の変死、応天門の変、異母妹の美姫高子と在原業平の禁断の恋などを目の当たりに、宮中での地位と評価を築いてゆく。藤原淑子の前半生を描いた杉本文学の最高峰。
著者等紹介
杉本苑子[スギモトソノコ]
大正14(1925)年、東京に生れる。文化学院卒。昭和38年「孤愁の岸」で第48回直木賞受賞。53年「滝沢馬琴」で吉川英治文学賞、61年「穢土荘厳」で女流文学賞を受賞。平成7年度文化功労者
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感想・レビュー
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ケロリーヌ@ベルばら同盟
53
中大兄皇子を補け、大化の改新を成し遂げた中臣鎌子に始まる藤原氏。度重なる通婚により殆ど皇室と血を同化し、一天万乗の君をも自家薬籠の中とした氏族の歴史を、名手杉本苑子氏が一女官の眼を通して描いた傑作。舞台は九世紀半ば。藤原長良の娘淑子は、その聡明さを見込まれ、従姉である東宮妃明子の私的な侍女として東宮御所に出仕することになる。聡明ながら晩手な少女が初めての恋を知った時、閨閥と権謀術数により成り上がって来た氏族の、自分も枝葉のひとつであることを自覚し、能動的に叔父良房の手駒となり、宮中の暗部に身を投じて行く。2023/02/06
巨峰
29
なかなか小説に書かれない平安前期を舞台にした杉本苑子さんの意欲作。摂取藤原良房の時代を姪の女官の目を通して綴る。面白いです2013/02/11
kaoriction@感想&本読みやや復活傾向
21
宮木あや子『泥ぞつもりて』から辿り着いた本作。天皇家を利用し全政権を掌握しようとした藤原一門の女として、怜悧に生きた藤原淑子の生涯。後宮の恋、文徳帝の変死、応天門の変、異母妹・高子と在原業平の禁断の恋。久々の平安物で、相関関係を把握するのに冒頭少し時間がかかったが、各章ごとに親切な相関図が折り込まれていたので思ったほどではなかった。それにしても。いつの世も権力争い、お世継ぎ問題、跡目争いで天皇家周辺は大変だぁ。上巻は、時の権力者良房が後の陽成帝の行く末を案じつつ薨去、淑子が定省を養子に迎えて終了。下巻へ…2013/08/09
とりあえず…
19
平安時代、上流階級の娘として生きた藤原淑子の生涯を描いた作品。叔父良房の策謀が見事!いつの世も例外なく、人の上に立ち続けるということは至難である。だが、この時代はこの後の時代よりも、高貴な家に生まれた女性という限定ではあるが、女性が世を動かす楽しさを味わえたのかもしれない。それにつけても、近親での婚姻関係などが多く人間関係が複雑。途中で覚えることを放棄してしまいました。 下巻につづく…2013/02/26
滇紅(てんこう)
11
★★★☆☆菅原道真の生きた時代の作品を読もうと「泥ぞつもりて」からこちらの作品に。サブタイトルにあるある女官とは、藤原高子の異母兄弟 藤原淑子。こちらでも高子と業平の恋愛模様が描かれていますが、今まで読んだ作品とはちょっと違う恋の入り口がえがかれていて、これはこれでなかなか良い。さ~下巻にいこう。2017/03/30