内容説明
昭和33年、インドネシアに対する賠償協定が調印されたのに目を付けた日本商社は、巨額の利益を求め画策する。その翌年、日本を訪れたインドネシア大統領スカルノは、ナイトクラブで美貌の歌手、根岸直美を見初める。戦後の日本、アジア関係の原点となる賠償に巻き込まれた人間たちのたどる数奇な運命を、壮大なスケールで描く。
著者等紹介
深田祐介[フカダユウスケ]
1931(昭和6)年、東京生れ。暁星高校を経て、55年早稲田大学卒業。日本航空に入社し、海外駐在員、広報室次長を歴任。83年退社し、作家活動に専念。76年『新西洋事情』で大宅壮一ノンフィクション賞、82年『炎熱商人』で直木賞を受賞。87年文芸春秋読者賞を受賞した『新東洋事情』以来、アジア情報・分析において、読者の絶大なる信頼を集める。著書に『暗闇商人』『激震東洋事情』『美食は人にあり』『鍵は『台湾』にあり!』(共著)など多数
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感想・レビュー
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まつうら
39
神鷲の国、インドネシア。初代大統領スカルノが日本人女性好きと知った商人たちが、戦後賠償をからめてビジネスを大きくしていく物語。しかし、主役は商社マンではなく、デビィ・スカルノ大統領夫人をモデルとする根岸直美だ。19歳でスカルノに見初められ、自分がビジネスの道具にされていることを認めつつも、大統領の情愛に尽くすことを誓う。とはいえ、嫁ぎ先は日本とは勝手が違う南方の異国だ。日々奮闘しつつ、自分を利用した商社を逆に利用する度胸を身に着け、ファーストレディとなるべく努力する直美の姿に、とても胸がアツくなる。2022/09/08
湖都
17
昭和30年代のインドネシアと日本を舞台に、スカルノ大統領やデヴィ夫人(作中では直美)、そしてしたたかな日本の商人達を描く。直美は、この上巻の最後にやっと第3夫人に収まったばかりで22歳。以前に読んだ夫人の自叙伝はかなり綺麗に描かれていたが、本書はもう少し生々しい。産業スパイ?人身御供?外交官?傾国の美女?見方はころころ変わる。そして、インドネシアにおける問題よりも、日本に残されていた家族の行末が切ない…。日本商人達の活躍も経済成長期の強さが出ていて、予想以上になかなか面白い本。2020/01/15
makimakimasa
9
現地在住5年目にしてやっと読む機会を得るが、以前『デヴィ・スカルノ自伝』を読んでいたので、大まかなストーリーはほぼ知っていた。本書はデヴィ夫人(作中ではファリダ)というヒロインの裏で暗躍する商社の動きに詳しく、日本の戦争賠償金を元手とする巡礼船チャーター、ホテル建設、落下傘納入、TV放送導入、独立記念塔建設など、またライバル商社が先に送り込んでいた愛人自殺の波紋、西イリアン問題など政局も絡む。これも先に『インドネシア領パプワの苦闘』を読んでいたので、商社マンが「正義の戦い」と肩入れするのを冷静に読めた。2021/11/14
rokubrain
7
戦後のインドネシア独立から同時代のほぼ今に至る日イ関係の歴史が見えてくる。 戦時賠償には「その陰に女あり」 デヴィ夫人がモデルの直美が、ここにあり、といった印象。 日本とアジアが一時期、同じ家族意識のようなものを共有していたんじゃないか、と夢想した。 物語はスカルノと直美を軸に描かれる政治、ビジネスの世界だが、 そこに利害を超えた個々の登場人物たちの気持ちも感じられる。つづく。2018/03/31
おかっち
2
インドネシア在住の今読むとさらに面白い。スカルノ大統領とお馴染みデヴィ夫人の結婚の裏側でどのような人たちが、どのような思惑で動いていたのか。ビジネスを軸に当時のインドネシアの内情も分かる貴重な一冊。それぞれの思惑を秘めた彼ら日本のビジネスマン達は、幸運をもたらすというインドネシアの伝説の神の鷲「ガルーダ」となれるのか。下巻も楽しみである。2017/05/07