内容説明
昭和20年7月16日、110余名の乗員と人間魚雷回天を乗せた伊五八潜水艦が呉軍港を出港した。フィリピン東方を通過する敵艦船をグアム―レイテ線上で撃沈せよとの特命を受けた倉本艦長は、宿敵マックベイ大佐と太平洋戦争における艦艇同士の最後の闘いに挑む―。全く新しい戦争サスペンスの誕生。
感想・レビュー
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absinthe
247
手に汗握る、迫真の潜水艦戦。お勧め本。第二次世界大戦末期、重巡洋艦インディアナポリスと、伊58号潜水艦による実在の戦闘をかなり脚色したフィクション。当時の戦闘の様子が丁寧に描写され、それぞれ指揮官の決断の重さと忠実に従う乗組員の勇気に感動する。フィクションの方が真実をよりあぶりだすことがあるが、本書は好例かもしれない。当時の日米の技術水準の違いも描写される。この圧倒的技術差でも戦い続けた日本軍兵士の勇猛さに驚かされる。2019/08/31
yoshida
153
1945年7月29日未明。南大平洋において日本の伊号第五八潜水艦はアメリカの重巡洋艦インディアナポリスを撃沈した。大東亜戦争での艦隊同士の最後の戦闘であり、大日本帝国海軍の最後の大型艦撃沈記録である。この事実にフィクションを織り交ぜながら重巡洋艦インディアナポリスと伊号第五八潜水艦の闘いを描く。それぞれの提督、永井少将とマックベイの読み合い。手に汗握る展開。圧倒的に不利な状況下で永井達はインディアナポリスを撃沈する。呉に帰投した彼らを待っていたのは敗戦だった。永井少将の訣別の辞に胸熱くなる。極上の戦記物。2016/05/29
koba
116
★★★★☆2015/04/05
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
65
第二次大戦末期、潜水艦伊58号が特命を受けて出撃する。「1945年7月米国重巡洋艦インディアナポリスと伊58号による最後の艦対戦があった」この一つの史実からいつくかのifを積み重ねて、重巡洋艦と潜水艦の一対一のヒリヒリとした緊張感、海の男達の熱い闘いを鮮やかに描き出している。永井少将とマックベイ艦長の心理戦も見事だ。池上氏はこうした組み立てが上手い。先の大戦で尊い命を失った方々には大変申し訳ない表現であるが、極上のエンターテインメントに仕上がっている。これがデビュー作というのもレベルが高いと思う。★★★★2015/07/10
Bugsy Malone
58
大東亜戦争終結直前、アメリカ海軍重巡洋艦インディアナポリスを撃沈した潜水艦伊号第五八。任務開始から撃沈までをフィクションを織り交ぜながら双方の視点で描いた物語。まさに息詰まる潜水艦内の描写、信頼と駆け引きによる壮絶な戦い、全編が見せ場と言っても差し支えない程の緊張感と胸が熱くなるエピローグ。情に訴え的を外れた戦争批判ばかりの昨今の戦記物とは一線を画する作品でした。2016/06/28