出版社内容情報
没後11年を経て編まれた未刊行エッセイ集に、新たに発見された8篇を追加。今なお人気を誇る藤沢作品の原点がうかがえる1冊。
内容説明
普段めったに鳴らない家の電話が火を噴き、妻が駈け廻って対応に追われた直木賞受賞の夜。ただやむにやまれぬものがあって書く「作家」という人種について。ヒーロー不在の時代に小説の主人公を作る受難―没後十一年を経て編まれた書に、未刊行の八篇を新たに追加した。作家・藤沢周平の真髄に迫りうる最後のエッセイ集。
目次
1(猩紅熱以来;一頭走れば群も―物の有限性に謙虚な怖れを ほか)
2(伊藤珍太郎「庄内の味」序;美術館を待望する ほか)
3(江戸の出版界;破調の織部―古田織部の生涯 ほか)
4(寒かった話;四十の坂 ほか)
5(叱られて当然;赤い渋うちわ ほか)
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。著書に「白き瓶―小説 長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、7年、紫綬褒章受章。9年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
19
没後11年(2008年)に出た未刊行エッセイ集の文庫版。書名のとおり故郷山形県にまつわる話題が多い。作品に関するものでは『白き瓶』の「長塚節の歌」や『回天の門』の「孤高の志士 清河八郎」を興味深く読みました。身辺雑記では、藤沢家の夫婦喧嘩「文句、あるか」や、大好きな演歌歌手「小野由紀子の表現力」に思わず笑いがこぼれます。それに巻末の阿部達二氏の解題・解説が素晴らしく、また藤沢本に手が伸びそうです。2020/07/30
生活相談屋
4
藤沢周平のエッセイ集。この人はあまりエッセイなど書かない人かと思っていたが、結構書いてるんですね。しかも小説の時には決して見せない、おちゃらけた面が出てたりして。藤沢周平ってストイックなだけじゃなくて、こんなおふざけもする人だったんだと、ちょっと意外な発見だった。2016/03/20
秋良
3
昭和の雰囲気に触れられるのが良かったかな。2018/12/09
かしまさ
3
藤沢周平の小説以外の文章を初めて読んだ。どうしても小説を読んでいるとその作者も登場人物と同じようなイメージで捉えてしまうけど、そうではない一面が見られるのは新鮮。ただ40年も前の文章も入っているので、時代が違うなーという感じはある。2015/11/17
きくちゃん
2
藤沢氏のエッセイ集だが、既刊から漏れていたものを没後に再編集して出版されたものだそうである。そのため5章からなる内容ごとにそれぞれテーマも文体も異なり、たかがエッセイといえど首尾一貫したものが見受けられず、ただ文章を寄せ集めただけのもので全体に希薄な印象を受けた。そんな中、口語体で書かれたⅠ章目だけはエッセイの神髄が随所に散りばめられていて肩ひじ張らずスムーズに読むことが出来る。軽妙洒脱な文章はどこか辻まことを思わせ、時代小説の文体を読みなれた藤沢周平らしからぬ意外な一面を垣間見た気がします。2017/05/21