内容説明
神名平四郎。知行千石の旗本の子弟、しかし実質は、祝福されざる冷や飯食い、妾腹の子である。思い屈し、実家を出奔、裏店に棲みついたまではよいのだが、ただちに日々のたつきに窮してしまう。思案の揚句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲げる。…喧嘩五十文、口論二十文、とりもどし物百文、よろずもめごと仲裁つかまつり候。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。主要な作品として「蝉しぐれ」「三屋清左衛門残日録」「一茶」「隠し剣孤影抄」「隠し剣秋風抄」「藤沢周平短篇傑作選」(全四冊)「霧の果て」「海鳴り」「白き瓶 小説 長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、平成6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、平成7年、紫綬褒章受章。「藤沢周平全集」(全25巻文芸春秋刊)がある。平成9年1月逝去
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感想・レビュー
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ふじさん
81
神名平四郎は、知行千石の旗本の子弟だが、祝福されざる冷や飯食いで、妾腹の子。実家を出て、裏店に棲みついたが、日々の暮らしに窮することになる。困った末に、「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という看板を掲げる。喧嘩五十文、口論二十文、取り戻し物百文等。彼の人柄もあり、稼業で生活が成り立つ目途が付く。仲裁の中身は様々だが、江戸庶民の日常が巧みなタッチで描かれており、読み応えあり。兄の神谷監物との関わりや友人で個性の際立つ明石半太夫と北見十蔵との親交も物語を盛り上げていて面白い。下巻の展開も楽しみだ。 2024/11/30
shincha
80
藤沢周平さんの連作短編集。安定の藤沢さん。旗本の妾腹の末っ子…いわゆる厄介者の平四郎は、家を出て暮らし始めるがすぐに行き詰まる。あるきっかけで仲介仕事を思いつき、「よろずもめごと仲裁つかまつり候」と世のもめごとを時に穏便に時に剣の腕を生かし、口銭を取ることで生きようと考える。短編でありながら、長編のような連続する話もあり、人情話もあり、幕末近くのキナ臭い政争があたりと、まるで時代小説の遊園地のよう。この平四郎がどんな事件に巻き込まれ、解決して行くのか…下巻に進みます。2022/02/04
Atsushi
71
旗本神名家の冷や飯食い平四郎が生家を出奔し、裏店で掲げた看板『よろずもめごと仲裁つかまつり候』。得意の剣と口を使って様々な問題の解決に取り組む若き平四郎の姿が何とも微笑ましい。盟友北見十蔵、明石半太夫との遣り取りも絶妙。元許嫁の早苗との恋の行方など下巻の展開が楽しみだ。2018/10/17
kei302
70
海坂藩城下町 第8回読書の集い「冬」◇「よろずもめごと仲裁つかまつり候」仲裁屋の看板を掲げてはみたものの…。軽妙な感じが新鮮。いつもうまく解決するわけではないところがミソで、商家への脅迫や別れ話、剣の腕を活かした活躍と幅広く楽しめるエンタメ剣豪もの。天保の改革、鳥居耀蔵暗躍と時代の動きも盛り込まれていて読みどころ満載。「伝授の剣」の日田孫之丞が格好いい。国元に帰ってしまって残念。下巻も楽しみ!2022/12/23
ふじさん
70
「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という看板を出して始めた仕事はよろず相談。神名平四郎は喧嘩仲裁、口論仲介等人々の様々な揉め事を仲介することになる。平四郎の人柄もあり次々と難題を解決して行く。一気に読み切ることが出来た。率直な感想は、久しぶりに読んで面白かった。下巻も楽しみだ。 2020/11/12