出版社内容情報
猫が、タヌキが、妻が、編集者が壊れ続ける! ラストが絶対読めない、天才作家の悪魔的なストーリーテリングが堪能できる短篇集。
内容説明
タバコの煙で空中浮遊できるようになった男の悲劇。極端に口べたな編集者の驚くべき末路。無類の読書好きが集まって送る夢の生活。奇妙な味わいの短篇から、一瞬で終わるショートショート、とんでもない展開のスラップスティックまで。天才のあくなき実験精神とエンターテインメント精神が融合した全30篇。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934年9月24日大阪府生まれ。57年同志社大学文学部卒業。60年SF同人誌「NULL」を発行、処女作「お助け」が江戸川乱歩に認められデビュー。81年「虚人たち」で泉鏡花文学賞、87年「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、2000年「わたしのグランパ」で読売文学賞などを受賞。「この世にありえない虚構」を描く独創的、実験的な作品で常に日本文学をリードし刺激し続けてきた。93年教科書に採用された作品が抗議を受けたことをきっかけに断筆宣言、96年から執筆再開。また97年には俳優として本格デビュー、テレビ、映画、舞台などで活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
355
ヤマなし、オチなし、意味ナシと、三拍子そろった短編集が機関銃のように乱射されるナンセンス短編集。個人的には嫌いじゃないが、胸を張って人に薦められるような本でもない。小説の核をなすなにか一つのアイディアからそのまま直感的に描きはじめられたような物語ばかりで、書き始めたはいいものの、どう終わらせればいいか著者自身がよくわからなくなって投げっぱなしジャーマン状態になってしまったような作品、といえばいいだろうか。興味があって、暇なら読んでみるのも悪くはない。2017/03/05
優希
77
奇才の実験的精神とエンターテイメント精神が混じり合い、筒井ワールド全開でした。奇妙な味の短編と一瞬で終わるショートショート、ぶっ飛んだスラップスティックがたまりません。確かに壊れているという感じで、普通に読み始めたはずが変な方向へと連れて行かれ、毒気に蝕まれています。でもこの持って行かれ方が癖になるんですよね。面白かったです。2015/10/26
アドソ
24
エッセイのようなフィクション(逆ではない)で始まったかと思うと、時代劇風ドタバタコメディ。正直「これ読むのキツイな」と思ったところであっさり終了(え?)。徹底的に無駄を省き、余韻を残した水墨画のような短篇集。10篇のショートショートもさることながら、その後続く四つの短篇がさらにすごい。中でも『狼三番叟』『店じまい』は傑作。同じ読後感を得たいなら筒井康隆でなくてもよいのかもしれないが、いやいや、筒井康隆が書いたからこそこの味が出るのだと思う。2019/04/25
はち
9
筒井康隆の恐ろしいところは、もう高齢なのに新しい作風に挑み続けているところだ。この作品は短編集なのだけれど、昔のスプラッター要素はなく、淡白な雰囲気ではある。それでも、奇妙な作品集。爆笑したのは鬼仏交替。憧れさえするのは耽読者の家。でもこの作品も何か怖いぞ。何なんだろう…2012/04/26
hirayama46
7
老いをテーマにしても筆致は若々しく……というわけでもなく、雰囲気も老成されたものになっていて、わりと投げやりな部分もあるのもそれはそれで愉快。最初の一冊には勧めにくいですが、特有の味わいはあると思います。2019/04/17