出版社内容情報
多くの戦史小説の名作を生み出してきた著者が、綿密な取材を進める上で得た貴重な証言のなかから特に印象深い話を元に真相に迫る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
り こ む ん
41
作者の戦史小説に対する姿勢がよく分かる。誠実に忠実に書き上げる為には、生の声が必要だと。小説として読んだ内容をこの証言がここの部分、あの証言がこれか!と思い出しながら読み、だから、あれだけの緊張感、臨場感が真に迫る作品が生み出されたのだなと。また、吉村さんの絶え間ない努力も大変なものだけれど、話してくださった方々にも本当に感謝したい。貴重な体験談だけれども、人は辛い記憶を話す事は、消えることのい傷痕をわざわざ、えぐり返し出血を強いるようなもの。それを話してくださった事に想いを寄せずにはいられない。2017/10/19
kawa
40
「戦後二十年後間ぐらいは、ほとんど死んでいるんだか生きているんだかわからない状態…」、戦闘機の空中戦で右手を失った方から吉村氏が引き出したひとこと。早逝した私の父も、戦争でねじが一本外れてしまったかも知れないと叔父から言われたこともあり他人ごととは思えないリアル感。戦争文学の名作「戦艦武蔵」「海軍甲事件」「海軍乙事件」「総員起シ」の下敷き資料となったインタビュー集を収録。小説の出来に負けない迫力で読み手に迫る。戦争証言者がいなくなったという理由で戦史小説を書かなくなった吉村氏、その訳が納得できる一冊。2023/11/20
James Hayashi
33
著者が取材し作品に仕上げるまで数々の証言を集め、貴重なる戦史や状況など記載。戦争を生き抜いた人々の証言なので生々しく魂を感じ取れるような具合。戦艦武蔵の進水、山本五十六長官の最期の護衛、伊号第33潜水艦の沈没と戦時の裏事情も読み取れる。訓練中沈没した潜水艦の引き揚げに関わった又場氏と取材をした白石氏へのインタビューは圧巻。「総員起し」という作品になっているそうだが未読なので読んでみたい。いくつかの写真が掲載されているが、引き揚げられた潜水艦と9年間綺麗な状態で遺体が残っているのはなんとも言えない凄さ。2016/10/12
mondo
25
この本は、かつて読み、本箱の隅に隠れていたものを改めて探し、再読したものである。この中には、「伊号第33潜水艦」の顛末が、生き残った2人からの取材に基づき、証言記録として綴られている。読み直しのきっかけは、先日読んだ「総員起シ」の実際の証言と当時の生の写真が掲載されていたからである。読み終えた小説以上に隠された驚愕の事実に釘付けとなる。「海軍乙事件」を読んだあと、再び、ページをめくってみたい。2016/10/12
金吾
19
○吉村さんの小説の骨幹の部分である当事者へのインタビューをまとめています。どの方に対しても先入観なく淡々と事実を確認しており記録文学というジャンルをすすめた吉村さんの原点が垣間見えたように感じました。2020/03/02