文春文庫<br> 下弦の月

  • ポイントキャンペーン

文春文庫
下弦の月

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 302p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784167169152
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

大正末期、千葉の寒村で数千人の警官をしり目に逃避行を続けた連続殺人犯熊次郎。'鬼熊事件'の意外な真相を描く表題作ほか六篇

内容説明

大正末年、千葉の寒村で、痴情のもつれから連続殺人事件を起した犯人が、警察の捜査網をしり目に長期間逃走を続けた“鬼熊事件”に材を取った表題作ほか、引退したプロボクサーの奇妙な生涯を描く作品、戦時中、猛獣を殺害せねばならなかった動物園の悲劇など、この作家の幅広く、多彩な力量を示す7短篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kinkin

102
全7篇からなる短編集。冒頭の「海の奇蹟」は貧しい一家が遭遇した事件の話。続く「鷺」と同様に貧しい一家と取り巻く様々な人間性が描かれていた。6篇目の「動物園」はあらすじを知っていて読みたくなかったが読んでしまった太平洋戦争に命を奪われts猛獣たちの話。そして最後の「下弦の月」大正時代に起きた殺人・放火事件の実録。主人公の熊次郎がどのよにこの事件が起き、その顛末が著者らしい冷徹で目をそむけないタッチで描かれてtる。現在の情報過多時代ならもっと俗っぽい話題に終始しただろう。熊五郎一家の悲惨さを想像してしまった。2022/01/15

GaGa

49
本当に久しぶりに吉村昭の小説を読んだ。なかなか力作揃いで統一性こそないがいい作品集だと思う。表題作は「鬼熊事件」を扱ったもの。「海の奇蹟」は閉鎖された村落でさらに閉鎖された漁師の家に生まれた主人公が、ある事件の収拾において父性を強く感じるというもの。「鷺」は非常に心に染み入る作品で、高校の教科書にのせればいいのにとすら思った傑作。「動物園」は戦中の動物園での動物毒殺の虚しさを伝える作品。あと掌編ながら、女というものを自分の母から見出す「探す」がよく出来ている。2012/02/05

James Hayashi

37
短編小説集。表題作は鬼熊事件とも呼ばれる現実にあった話し。殺人を犯し逃亡するのであるが、投入された警官はのべ5万人に上るという。報道にも問題点があり、語り継がれている様だ。「動物園」は戦時中、危険とみなされた動物の処分を命じられた職員と猛獣。この話しはいたたまれなく苦手だ。「鷺」も浮かぶ情景に火の手が走り、冷や汗をかくほど。人間の嫌な部分を見せつけられた。2019/10/15

ソーダポップ

34
表題の「下弦の月」を含む短編七篇が収められています。大正末期の千葉県で発生した、'鬼熊事件'や、太平洋戦争末期以降の空襲激化に伴い上野動物園で治安のため多数の動物を殺処分した経過を描いている'動物園'など、いわゆる吉村昭さん得意の実録小説であります。これら、七篇は吉村文学において感受性ドラマがさまざな視点で描かれていました。2022/02/19

金吾

29
◯人間のエゴを感じる部分もところどころに散りばめられた短編集です。哀しさを感じる終わりも含めて、満足いく読後感があります。田舎者の小心さや偏狭さが目立つ「海の奇蹟」「鷺」や飼育員の葛藤や動物の境遇に悲しくなる「動物園」が良かったです。2025/01/12

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/50002
  • ご注意事項

最近チェックした商品