出版社内容情報
時は平安。年頃の内大臣の姫君・月冴が小天狗の外道丸の手助けで始めた恋の数々……姫が最後に結ばれる男は? 夢と冒険の幻想世界
内容説明
内大臣の姫君・月冴は恋多き年頃を迎えた。小天狗の外道丸の手助けで仏眼寺の仁照阿闍梨に想いを打ち明け、狐の紫々に姿を映して東国男の晴季を誘惑し、愛の使者鮫児の力で弾正宮とかりそめの逢瀬、遂には悪名高き悪来丸にとらわれの身に…姫が最後に手にした真実の愛は?王朝を舞台に夢と冒険に誘う雅びやかな幻想世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mt
24
二条の内大臣のお姫様である月冴の恋物語5編。幻想的小説と思って構えて入ったけど見事に裏切られた。まだ300歳の子供天狗・外道丸やその仲間たちと月冴は自由な恋を求めさ迷う。古典版ファンタジー、または冒険小説と言ったところか。本作も、筆者の半端じゃない古典への愛情といつものユーモアが溢れている。突然、カタカナや関西弁が出てくるし、深い知識を何気なくクロスさせて物語に落とし込むのもいつも通り。かつて、田辺聖子先生は私を古典の入り口に招じてくれたが、出来の悪い生徒は出入口で行き来している。次は源氏物語を読もう。2015/09/13
みっちゃん
9
幼い頃から后候補として育てられた月冴姫が、天狗や人外のもの達の力を借りながら、真実の愛を見つける話。さらりと読了。2015/02/25
Akiki
5
后になるために育てられた内大臣の姫。その育ち故に戯れで人の心をもてあそんでしまうような傲慢さも持ちつつ、本性はまっすぐで優しい。そんな月冴姫が真実の愛を手に入れるまでの冒険(?)物語。平安の都らしく怪しいモノが跋扈する。時代考証を気にせず書かれたコメディかと思えばかなり厳しい風刺も効いている。最後はハッピーエンドなのだけど、その裏には生まれたばかりの小さな姫が犠牲になるかもしれないという棘が刺さっていて少し痛い。2015/07/01
更夜
4
何十年ぶりの再読。前回読んだ時はコミカルな平安時代ものと思っていました。シリアスな『隼別王子の叛乱』とは違う田辺聖子さんの創作古典で、確かにコミカルではあるけれど、身分の高い姫、月冴姫が天狗の外道丸と出合って、夜の外の世界に飛び出す。普段見られない市井の人々の姿や不思議な魑魅魍魎たちが織りなす冒険物語でした。そしてとても素敵な恋物語でもあります。やはりおせいさんの本を読むとほっとする。私の中ではお薬としての田辺聖子さんです。2023/06/22
エドワード
4
王朝懶夢譚というタイトルから妖異なホラーものかと思いきや、やんごとない姫君のラブストーリー。姫の名は月冴、内大臣の娘。婚約者だった東宮が亡くなり、弟君に輿入するため十年待たされるという憂き目にあう。月冴の側には天狗の外道丸、狐の紫々等、憎めない妖怪たちや薬造りの麻刈がいて、東国から来たハンサムボーイ晴季とめでたく結ばせてくれる。妖怪たちのやんちゃなやりとりも面白く、「クイズ」「ノープロブレム」等と平気でしゃべってしまう、極めて現代っ子の姫君のお話でした。2012/01/18