内容説明
「まるで不作の生大根をかじっているようだ」さんざんにもてあそばれた挙句、罵られ捨てられたお松は、偶然出会ったその男、煙管職人の勘蔵を絞殺してしまった。―この言葉を胸に秘めて、数奇な運命を辿るお松を評して、長谷川平蔵は、「男にはない乳房が女を強くするのだ」というが…。鬼平犯科帳番外篇。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
大正12(1923)年、東京に生れる。昭和30年、東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、35年、第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。52年、第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。63年、第36回菊池寛賞受賞。平成2年5月3日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
138
再読です。鬼平犯科帳の番外編で、「お松」という女性を主人公にしたもので、それにからんで長谷川平蔵が火盗取締改めに着く前後の話となっていて結構長い期間についての話を長編にしたものです。本体に出てくる密偵ではなく別のいわゆる「豆岩」といわれる人物が活躍します。この主人公の女性は不幸せな生い立ちですが、その後にいい人との出会いがあったりして幸せになります。人間の弱さなどがうまく描かれていると感じます。2023/10/01
優希
54
『鬼兵犯科帳』の番外編になります。散々弄ばれた挙句、棄てられたお松は、偶然出会った勘蔵を殺害してしまいます。お松は「不作の大根」の言葉を胸に数きな運命をたどるのですね。そんな折の鬼平の乳房が女を強くするという一言はささります。鬼平は本当の強さを知っているのかもしれませんね。面白かったです。2023/03/17
ぶんぶん
23
【図書館】鬼平シリーズの番外編。 ひとりの女の数奇な人生に鬼平を絡めて描く作品。 「不作の生大根をかじってるようだ」と言われ続けた女、それが男の手によって生まれ変わるマイ・フェア・レディ的な物語。 お松の人生に影を落す男たち、それに関わって行く長谷川平蔵。 平蔵の火盗改めに任命される当初にスポットを当てて、人殺しの女の紆余曲折の人生をサスペンスフルに描くスペクタル・ロマン。 「男には無い乳房が女を強くする」と鬼平は言うが・・・長編の傑作と思う。 2020/06/26
HIRO1970
20
☆☆☆ 鬼平番外編 若き日の平蔵 思いがけず又出会えてよかった。2012/07/24
navyblue
19
鬼平犯科帳の番外編。一度読み出したらとまらない。長谷川平蔵が火盗改めのお役目に就く前の物語。お松という一人の女性の人生と鬼平の人生がところどころうまく交差していく。お松はなんだかんだといいながら、自分の身の上に起こるできごとを受け入れ、しっかりと自分の足で立って生きていくある意味とてもたくましい女性だ。そして、そんなお松を遠くからあたたかく見つめる平蔵の大きな心が、読者にもよく伝わるのではないだろうか。読み応え有り、読了感も清々しい。2018/05/11