内容説明
信長の対抗勢力は次第に駆逐されつつある。於蝶の胸に密かな決心が湧きあがった。高遠攻めの本陣で、信長の長男、信忠はふとめざめた。(女忍びか…おれの寝首を掻きに来た)一瞬、於蝶の呼吸はおもわずゆるんだ。織田信忠は類い稀な美貌であった。信忠の手が於蝶の下着にふれる…。天下動乱をよそに女忍びの血はせつなく騒いだ。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
大正12(1923)年、東京に生れる。昭和30年、東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、35年、第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。52年、第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。63年、第36回菊池寛賞受賞。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“必殺仕掛人”シリーズなど多数。平成2年5月3日没
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感想・レビュー
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ぶんぶん
25
【図書館】於蝶の信長討ちの最終巻。 と言っても、ほとんど於蝶は登場シーンが無い。 いよいよ、話は「本能寺」に行き着くが、ここでも於蝶の活躍は無い。 ただ、女の情念として、善住房光雲、井笠半四郎、織田信忠を愛し尽くした。 他にも抱かれただけの男は数知れずいただろう。 妖艶な女忍びである、40過ぎまで男狂いとは恐ろしい。 ともあれ、於蝶の望みは「明智光秀」の野望にて潰えた。 於蝶と半四郎の動きにより武田信玄から豊臣秀吉の時代が判るようになっている。 歴史小説は嫌いだが忍者を軸にしたお話しは面白い。 2022/08/25
あまね
18
『信長憎し』の一心で忍び働きをするお蝶さん。けれど、信長の首を打つ難しさ故に、ターゲットを息子・信忠に変えます。それが、びっくり仰天!お蝶さん、あまりに信忠がいい男すぎて一目惚れしてしまいます。(ノ・Д・)ノお話としてはびっくりな展開ですが、武田家滅亡から本能寺の変、そしてその後までを忍びの者たちをうまく絡めていく展開はさすがですね。とても楽しい時間でした。2021/05/22
まあさん
14
本作は「蝶の戦記」で初登場の“於蝶”が活躍します。 舞台は姉川の合戦から本能寺の変にかけて…信長を挟んで敵味方に分かれて暗躍する忍者の物語が、池波正太郎氏の自由自在の筆によって描かれ、読むものを全く飽きさせません。 主人公“於蝶”は本作の終わりで風のように消えていき…それがもう読んでしまった作品にしっかりつながっていくという…もう一回、読み直したくなってしまいますね。。2023/05/05
あいくん
13
☆☆☆武田家の滅亡から本能寺の変、豊臣秀吉の台頭までが描かれます。武田家は滅亡します。武田勝頼と家臣、侍女たちは自決して果てます。武田家の滅亡は寂しいものがあります。大河ドラマ「麒麟が来る」の参考になるような内容があります。明智光秀は知識人です。光秀は武将としてよりも外交官、政務官としての功績が大きかったのです。信長は光秀を軽視していたわけではなかったようですが、光秀は信長が自分を評価していないと感じていました。本能寺の変に至るまでの光秀の心の動きが細かく描かれています。2020/07/14
Book Lover Mr.Garakuta
13
戦国時代の歴史を紡ぐ作品の一つ。忍びの掟や主従関係が読み処。自分が思う読み処:決意の章の274頁の17行目から18行目の2行である。2019/04/07