出版社内容情報
秀吉に仕えて一介の野武士から十一万石の大名に、やがて悲運の最期をとげる前野将右衛門の生涯を、新史料を駆使して描く戦国ロマン
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shinji
100
お市の方といい、戦国の当事者の立場というものはホントやるせないです。歴史は少しとんで秀吉ですね。将右衛門は男を見る眼があったということだが、そこまで吉乃を想えるのは何故なんでしょうか? 大きな時代の動きを辿っているのでいずれとは思っていましたが、そのようにキリシタンが関わってくるとは... ラストのつるみの呟きが男にとって背筋が寒くなるけど、信長、秀吉のように権力を突き詰めようとすると心が崩れてしまうのですね。無骨に忠義を貫いた将右衛門も権力に埋もれた気がします..2017/05/01
takaC
38
つるみの囁き。「さてさて、男とは愚かなもの。太閤さまほどのお方でも、御自分の御側室から生まれたお子ゆえ、わが子にちがいなし、そうお思いになる。男とはまこと……操りやすきものにござりますよ」へぇ。2014/08/29
夜間飛行
23
古希を過ぎた作者が膨大な資料を駆使した大作。浅井父子の最期など平家物語を思わせる所が多々あり、その枠組を借りて愛の主題を追究した作品かと思う。秀吉の狂っていく様子と茶々の復讐心は身震いする程で、遠藤文学でお馴染みの「人間の悪」の謎と深淵がここにも示されている。将右衛門の中ではあゆを初めとする女性への愛と、悪に与して生きねばならぬ苦悩が交錯し、そのとき高山右近ら切支丹のこの世の外に価値をおく生き方が脳裏をよぎる。あゆと一緒に見た木曽川に導かれるようにして、我が子と運命を共にする将右衛門は殉教者のようだった。2013/07/29
活字ジャンキー
8
秀吉を主とし、愚直だった前野将右衛門の晩年を辿る下巻。人情深かった秀吉も遠く離れ、火攻め水攻め厭わない秀吉へと変貌する。秀吉の老獪な戦術に、秀次と共に前野一党が崩れていくのだが、亡き兄者小六の「心していささかの油断なきよう」という忠告や、坪内玄蕃の「あの者は巧言をもって巧みに媚を呈し意を得る事、犬の如き人物だ」との酷評が頭を掠める。ぽつりと「所詮たのみと致すべきお方ではござりませんでした」と嘆く将右衛門の最後に儚さ極まりぐぐっと目頭にきます。古木、茶々の執念か。恐ろしい。2021/06/27
秋乃みかく
7
★★★☆☆ そっかー、前野将右衛門って秀次謀反事件に連座して切腹させられた人だったのか…。晩年の秀吉のやりようは本当に酷いな。。キリシタン信仰について書かれていたのは遠藤作品らしいなと思いました。2017/05/10