内容説明
清張ファンを自認する宮部みゆきが巨匠の傑作短篇を選びに選び、全てに解説を付けた。上巻はミステリ・デビュー作「恐喝者」の他、宮部いち押しの名作「一年半待て」「地方紙を買う女」「理外の理」や、「或る『小倉日記』伝」「削除の復元」の鴎外もの、斬新なアイデアで書かれた「捜査圏外の条件」、画壇の裏面を描く「真贋の森」等を収録。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。67年吉川英治文学賞、70年菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92年死去
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年生れ、東京・深川育ち。「我らが隣人の犯罪」でオール読物推理小説新人賞を受賞。「魔術はささやく」で日本推理サスペンス大賞、「龍は眠る」で日本推理作家協会賞、「本所深川ふしぎ草紙」で吉川英治文学新人賞、「火車」で山本周五郎賞、「蒲生邸事件」で日本SF大賞を受賞。「理由」で第120回直木賞を受賞する
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
95
松本清張は、私にとっては特別な作家。私の二十代、三十代は、彼を抜きにしては語れない。常に、彼の作品を手元において読んでいた。今となっては、懐かしい思い出。或る「小倉日記」伝から始まり、恐喝者、一年半待て、地方紙を買う女、理外の理、削除の復元、捜査圏外の条件、真贋の森等、今読み返しても、やはり面白い。今だにドラマ化されるのが分かる。昭和史発掘で226事件や日本の黒い霧での追放とレッド・パージも初めて知る事実が語られていて興味をそそられた。個人的には、「一年半待て」「地方紙を買う女」「真贋の森」が面白かった。2024/09/02
Aya Murakami
95
10年以上前にリアル書店で購入した本。 若干文学や芸術にまつわる話が多めの印象。ラスト2作品は昭和の闇のお話。 或る「小倉日記」伝は障害を持った主人公(原因は近親相姦か?)が鴎外が残したとされる(実は後々主人公とは遠い場所で出てきます)小倉日記捜索のお話。頭がいい主人公は多分おじいさんに似たのですね(働くのは苦手だった模様)。戦争で鴎外も漱石もない状態になったのに図書館や青空文庫で気軽に作品に触れることができる現代の私。しかしながら活字離れが進み母も弟も鴎外のことを聞くと「頭がいたい」と。2024/03/16
おか
78
各章の最初に宮部みゆきさんの前口上が有るのも興味深い。宮部みゆきみゆき責任編集とある通り 宮部さんの大好きな松本作品が系統だって並べられている。殆ど既読作品だが『削除の復元』は多分読んでいない。森鴎外について 面白い考察がある。そして今作で一番だったのは『日本の黒い霧』(1960年〜文藝春秋)と『昭和史発掘』(1964年〜週刊文春)日本の〜は上下巻、昭和史〜は全十三巻を抜粋し「2、26事件」と「追放とレッド・パージ」を紹介している。これだけでも 読んだ価値があり 流石社会派小説家だと納得する。2018/12/16
じいじ
72
まずもって松本清張の短篇小説は、嬉しいことに《260篇》もあるという。その260篇から宮部みゆきが選んで、どういう順番にするか考え、編集したのがこの短篇集上中下です。宮部の意気込みと熱意が、各々の前口上から伝わってきます。さて、口開けは【或る「小倉日記」伝】。じつは今作は1年半前に読んだばかり、飛び越して2作目からと一瞬考えた。でも、何故に一話目をこれにしたか? を知りたくて再読しました。この判断は正解。新しい発見もあって、めっちゃ面白かった。宮部編集の「妙」に脱帽します。何度も何度も読み返したい短篇集。2025/02/19
goro@the_booby
71
「一年半待て」はやはり名作ですが、この宮部コレクションの中で初めて読んだ「真贋の森」が気に入りました。復讐の計画を進める暗くも熱い想いと破綻した後のある意味清々しさが印象に残る。犯罪に走る、落ちる人たちへ何故か寄り添ってしまうのだ。しかしそう上手くは行かないよと清張御大は戒めてくる。『或る「小倉日記」伝』は犯罪小説ではないが「砂の器」的な趣が涙をそそる。主人公田上に清張は自分の姿も見たのかもしれない。そして本書を読んだ後はリルの歌や玉堂の画を検索してしまうのです。また少しづつ清張を読みたいです。2021/05/19